判旨
憲法36条が禁止する「残虐な刑罰」とは、不必要な苦痛を伴う処罰形式や、人道上の観点から是認できない刑罰を指す。また、実質的に量刑不当を主張する上告は、適法な上告理由には当たらない。
問題の所在(論点)
具体的事件における宣告刑の重さが、直ちに憲法36条に違反する「残虐な刑罰」に該当するか、および量刑不当の主張が適法な上告理由(刑訴法405条)となるか。
規範
憲法36条にいう「残虐な刑罰」とは、刑罰の形式またはその執行方法が、人道的見地から見てあまりに過酷であり、その時代の一般の良心に照らして是認しがたい苦痛を伴うものを指す。他方で、具体的事件における刑の重さ(量刑)が不当であるとの主張は、憲法違反の主張を仮装していても、刑訴法405条の適法な上告理由には該当しない。
重要事実
被告人が犯した罪に対し、下級審において言い渡された量刑について、弁護人が憲法36条の「残虐な刑罰」の禁止に違反すると主張して上告した事案。しかし、その主張の実態は、憲法解釈の誤りそのものではなく、当該事件における宣告刑が重すぎるという量刑不当の訴えであった。
あてはめ
弁護人は違憲を主張するが、その実質は特定の事件における刑の重さに対する不服、すなわち量刑不当の主張にすぎない。最高裁の判例(昭和22年(れ)323号等)に照らせば、残虐な刑罰とは刑罰そのものが不必要な苦痛を伴うものであるべきところ、本件ではそのような性質は認められない。したがって、適法な上告理由を構成せず、職権で破棄すべき事由(刑訴法411条)も見当たらない。
結論
本件上告は棄却される。実質的な量刑不当の主張は、憲法36条違反を構成せず、適法な上告理由には当たらない。
実務上の射程
憲法36条の「残虐な刑罰」の解釈を示す基本判例の系譜に属する。答案上は、死刑制度や特定の刑罰の合憲性が争点となる際の定義付けとして利用できる。また、量刑不当を憲法問題にすり替える主張を遮断する実務上の論法としても重要である。
事件番号: 昭和30(あ)1667 / 裁判年月日: 昭和30年9月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法36条が禁ずる「残虐な刑罰」とは、刑罰の種類や内容が人道上の見地から残酷と認められるものを指し、被告人にとって刑が過重であるという主観的・相対的事情はこれに当たらない。 第1 事案の概要:被告人は刑事事件において有罪判決を受けたが、その宣告された刑罰が自己にとって過重であり、憲法36条が禁ずる…