証人を公判廷で尋問されたい旨の弁護人の意見に反して他の裁判所に嘱託して尋問したからといつて第一審裁判所が弁護人及び当時不拘束の被告人の反対尋問権を侵害したものとは認められず、被告人弁護人が任意にその嘱託尋問に立ち会わなかつたからといつて所論違憲の問題は起きない(昭和二六年(あ)二七六〇号同二七年二月八日第二小法廷判決)。
弁護人の意見に反し嘱託してなされた証人尋問と反対尋問権
刑訴法158条,刑訴法157条,憲法37条2項
判旨
被告人又は弁護人が任意に証人嘱託尋問に立ち会わなかったとしても、裁判所が反対尋問権を侵害したことにはならず、憲法第37条第2項に反しない。
問題の所在(論点)
被告人又は弁護人が任意に証人嘱託尋問に立ち会わなかった場合において、裁判所が反対尋問権を侵害したとして憲法37条2項違反の門題が生じるか。
規範
被告人に保障される証人尋問権(憲法37条2項)は、裁判所による反対尋問の機会の付与を意味する。したがって、裁判所が適法に証人尋問の機会を提供したにもかかわらず、被告人や弁護人が自らの意思でこれに参加しなかった場合には、権利の侵害は認められない。
重要事実
第一審裁判所が証人嘱託尋問を実施したが、当時不拘束であった被告人及びその弁護人は、任意に当該嘱託尋問に立ち会わなかった。後に弁護人は、この手続が反対尋問権を侵害するものであり違憲であると主張して上告した。
あてはめ
本件において、第一審裁判所は嘱託尋問の手続を適切に進めており、被告人側に反対尋問の機会を否定した事実は認められない。被告人及び弁護人が「任意に」立ち会わなかったことは、付与された権利を自ら行使しなかったものと評価できる。したがって、裁判所が被告人側の反対尋問権を不当に制限したとはいえない。
結論
被告人らが任意に嘱託尋問に立ち会わなかったとしても、反対尋問権の侵害には当たらず、憲法違反の問題は生じない。
実務上の射程
伝聞例外(刑訴法321条1項等)や証人尋問手続における反対尋問の機会の要否を論じる際の補充的根拠として機能する。被告人側に帰責事由がある場合や、機会の放棄とみなせる状況下では、実質的な尋問が行われなくとも憲法違反とはならないとする射程を有する。
事件番号: 昭和29(あ)3344 / 裁判年月日: 昭和30年5月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法37条2項は、裁判所に対して被告人側の申請に係る証人の全てを取り調べる義務を課したものではなく、裁判所が必要性を認めて尋問を許可した証人について、被告人に反対尋問の機会を与える等の権利を保障したものである。 第1 事案の概要:被告人の弁護人は、証人尋問の申請を行ったが、裁判所がこれを採用しなか…