判旨
被告人が提出した控訴趣意に対し、原審が形式的に判断を示さなかったとしても、その内容が弁護人提出の控訴趣意に含まれており、実質的な判断がなされている場合には、原判決の破棄を要する事由には当たらない。
問題の所在(論点)
被告人が提出した控訴趣意に対し、裁判所が判決文中で形式的に個別の判断を示さなかったことが、判決に影響を及ぼすべき法令違反(判断遺脱)となり、破棄事由に該当するか。
規範
控訴趣意に対する判断の不備が刑訴法上の違憲や重大な法令違反となるか否かは、当該判断の漏れが実質的に被告人の防御権を侵害し、判決を破棄しなければ著しく正義に反すると認められるかによって決せられる。形式的な判断の欠如があっても、他の判断によって実質的にその主張が排斥されていると認められる場合には、破棄事由には当たらない。
重要事実
被告人と弁護人の双方が控訴趣意書を提出した事案において、原審は弁護人が提出した控訴趣意(量刑不当)については判断を示したが、被告人本人が提出した控訴趣意については何ら判断を示さなかった。被告人提出の控訴趣意も量刑不当を主張するものであり、その内容は簡潔で、弁護人の主張に包含される性質のものであった。
あてはめ
本件において、被告人が提出した控訴趣意はいずれも量刑不当を主張するものであり、その内容は弁護人が提出した控訴趣意の範囲内に含まれるものであった。原審は弁護人の控訴趣意に対して判断を示しており、これによって被告人自身の主張に対しても実質的な判断が与えられたものと解される。したがって、形式的な判断の欠落があるとしても、それによって直ちに「著しく正義に反する」事態が生じているとはいえない。
結論
被告人提出の控訴趣意に形式的な判断がなくても、実質的な判断がなされている以上、原判決を破棄すべき理由にはならず、上告は棄却される。
実務上の射程
控訴審における判断遺脱の主張に対する防御線として機能する。判決文の理由中に明示的な記載がなくても、他の理由から実質的に判断済みであると構成できる場合の限界事例として参照される。答案上は、手続的権利の保障と実質的な正義の均衡を図る際の判断材料として用いる。
事件番号: 昭和28(あ)1102 / 裁判年月日: 昭和28年7月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴審が第一審判決を破棄して自判(破棄自判)する場合、控訴理由のうち量刑不当の論旨について特段の判断を表示する必要はない。 第1 事案の概要:被告人が第一審判決に対し、量刑不当等を理由として控訴を提起した事案。控訴審(原審)は第一審判決を破棄し、自ら判決を言い渡したが、その際、被告人側が主張した量…