一 共同被告人の検察官に対する供述調書は、他の被告人との関係においては刑訴三〇一条の「犯罪事実に関する他の証拠」にあたり、これを最初に取り調べても違法であるとはいえない。即ち同条は他のすべての証拠を取り調べられた後という意味ではなく、自白を補強し得る証拠が取り調べられた後であれば足りるのである(昭和二七年(あ)第五一一六号同二九年三月二三日第三小法廷決定参照)。 二 第一審第一回公判調書に、検察官は右各書証の要旨を告げて被告人及び弁護人に示して裁判官に提出したと記載されているのは刑訴規則二〇三条の二の規定に従つて記載されたものと認められるが、右規則の規定は、所論のように法律の規定を規則で変更したものでなく、刑訴三〇五条の定める証拠書類に対する証拠調の方式を合目的に簡易化したにとどまるものと解されるから、違憲論は前提を欠き採るを得ない。
一 共同被告人の検察官に対する供述調書を最初に取り調べることは違法か 二 刑訴三〇五条の定める証拠書類に対する証拠調の方式と刑訴規則二〇三条の二との関係
刑訴法301条,刑訴法305条,刑訴規則203条の2
判旨
刑事訴訟法301条にいう「犯罪事実に関する他の証拠が取り調べられた後」とは、すべての補強証拠の取調べ完了を意味するものではなく、自白を補強し得る証拠が取り調べられた後であれば足りる。また、適法な証拠調べを経ていない証拠を事実認定に用いる違法があっても、当該証拠を除外してなお犯罪事実を認められる場合には、判決破棄の理由にはならない。
問題の所在(論点)
1.刑事訴訟法301条が規定する自白調書の取調べ時期の制限(他の証拠が取り調べられた後)の意義。2.適法な証拠調べを経ていない証拠に基づき事実認定を行った場合、直ちに判決の破棄事由(刑訴法379条等)となるか。
規範
1.刑事訴訟法301条の「犯罪事実に関する他の証拠が取り調べられた後」とは、すべての証拠の取調べ完了を意味するものではなく、自白の内容を補強し得る証拠の取調べが行われた後であれば、自白調書の取調べを行うことは適法である。2.共同被告人の供述調書は、他の被告人との関係において同条の「他の証拠」に該当する。3.証拠調べを経ていない証拠を事実認定に用いる違法がある場合でも、当該証拠を除外した残りの証拠によって犯罪事実が認められるならば、その違法は判決に影響を及ぼすものではなく、破棄理由とはならない。
重要事実
被告人の司法警察員および検察官に対する供述調書が証拠として提出された際、他の証拠と同時に取調請求がなされた。第一審において、これらの自白調書は他の補強証拠が取り調べられた後に取り調べられた。また、第一審判決が証拠として掲げたものの中に、適法な証拠調べの手続きを経ていないAの司法警察員に対する供述調書が含まれていたが、原審(控訴審)はこれを除外しても有罪認定は維持できると判断した。
あてはめ
1.本件では、被告人の各供述調書の取調べは、他の補強証拠が取り調べられた後に行われており、同条の趣旨に反しない。また、共同被告人の供述調書を「他の証拠」として先行して取り調べることも許容される。2.証拠調べ未了のAの調書を事実認定に用いた点には形式上の違法がある。しかし、一審判決が挙げた他の適法な証拠群を総合すれば、Aの調書を除外したとしても、被告人の犯罪事実は十分に認定できる。したがって、当該手続違法は判決の結果に影響を及ぼす重大なものとはいえない。
結論
自白調書の取調べ時期に関する判断および、一部証拠の取調べ未了があるものの有罪認定を維持した原判決の判断は正当であり、本件上告を棄却する。
実務上の射程
自白の取調べ順序(刑訴法301条)の解釈として確立した判例である。また、証拠調べの不備という訴訟手続の法令違反について、判決への影響(刑訴法379条・383条等)の有無を判断する際の「除去後の証拠による認定可能性」という枠組みを示す。答案上は、伝聞法則違反や証拠調べの不備を論じる際、その違法が判決破棄にまで至るかを検討する場面で使用する。
事件番号: 昭和27(あ)78 / 裁判年月日: 昭和28年3月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の自白のみによって有罪判決を下したものではなく、また供述の任意性が否定されない以上、憲法違反や刑事訴訟法上の違法は認められない。 第1 事案の概要:被告人が有罪判決を受けた事案において、弁護人は第一審および原審の判決が被告人の自白のみに基づいたものであること、および供述調書が不任意なものであ…