判旨
刑務所における受刑者の処遇が、直ちに憲法36条の「残虐な刑罰」に該当することはない。また、量刑不当や事実誤認の主張は、憲法違反の主張を形式的に伴うものであっても、適法な上告理由にはあたらない。
問題の所在(論点)
1. 刑務所における受刑者の処遇を理由として、身体拘束を伴う刑罰が憲法36条の「残虐な刑罰」に該当するか。 2. 事実誤認や量刑不当を実質とする主張が、刑訴法405条所定の上告理由(憲法違反)として許容されるか。
規範
1. 憲法36条が禁じる「残虐な刑罰」とは、刑罰の内容そのものが人道に反する性質を有するものを指し、適切な監獄施設における拘禁自体はこれに該当しない。 2. 刑訴法405条の上告理由において、憲法違反を主張する形式をとっていても、その実質が事実誤認(犯罪事実の判示不備)や量刑不当を非難するものである場合は、適法な上告理由とは認められない。
重要事実
被告人は、第一審判決の犯罪事実に不備がある点や、量刑が不当であることを不服として上告した。その際、弁護人は「現在の刑務所は被告人を牛馬に等しい状態に置くものである」とし、受刑者の処遇や量刑、事実認定の不備が、憲法32条(裁判を受ける権利)や憲法36条(残虐な刑罰の禁止)に違反すると主張した。
あてはめ
1. 憲法36条について:わが国の刑務所制度は受刑者を牛馬のように扱うものではなく、人権を尊重した処遇が行われている。したがって、弁護人が主張する「残虐な状態」という前提は事実に反する。 2. 上告理由について:判示不備(事実誤認)の指摘は実質的に第一審判決への非難に過ぎず、また量刑不当の主張も憲法違反の問題とはいえない。これらは刑事訴訟法が定める上告理由の要件を欠いている。
結論
本件上告は理由がないため棄却される。刑務所における処遇が残虐な刑罰に当たるとの主張は前提を欠き、その他の実質的な量刑・事実争いも適法な上告理由にならない。
事件番号: 昭和28(あ)3664 / 裁判年月日: 昭和29年4月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告理由として主張された憲法違反や判例違反が、実質的に単なる訴訟法違反や量刑不当の主張にすぎない場合には、刑訴法405条の上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:被告人が、第一審判決における訴訟法違反を原判決(控訴審)が職権調査せず看過した点について、憲法違反および判例違反であると主張して上告…
実務上の射程
本判決は、刑事弁護において憲法違反を濫用的に主張し、事実関係や量刑を争おうとする手法を制限する実務上の意義を持つ。また、憲法36条の解釈において「執行環境」のみを理由とした残虐性の主張を退ける基準を示している。
事件番号: 昭和26(あ)2271 / 裁判年月日: 昭和28年3月3日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法36条が禁止する「残虐な刑罰」とは、法定刑の範囲内で量刑が行われる限り、原則としてこれに該当しない。 第1 事案の概要:被告人が原判決の量刑を不当として上告し、その中で原判決の量刑が憲法36条の禁止する「残虐な刑罰」に該当し憲法違反であると主張した事案である。具体的な犯行事実に係る記述は、判決…