強要、拷問等を理由とする憲法三八条、三六条違反の主張が欠前提とされた事例
憲法38条,憲法36条
判旨
被告人が供述の強要や拷問等を受けたと疑わせる証跡が認められない場合、憲法38条(黙秘権・自白強要禁止)および36条(拷問・残虐刑禁止)違反を理由とする上告は前提を欠き、認められない。
問題の所在(論点)
被告人の供述が憲法38条(自己負罪拒否権・自白強要禁止)および36条(拷問等の禁止)に違反する手続によって得られたものであるか、またその違憲主張が上告理由として成立するか。
規範
憲法38条の自白強要禁止および憲法36条の拷問禁止に違反すると主張するためには、捜査機関による物理的・心理的な強制力が実際に行使されたと疑うに足りる具体的な事実関係(証跡)が存在することが必要である。
重要事実
被告人は、捜査段階において供述の強要や拷問等を受けたと主張し、憲法38条および36条違反を理由に上告を申し立てた。しかし、裁判所が訴訟記録を精査したところ、被告人が主張するような強要や拷問の事実を示唆する客観的な証跡は一切認められなかった。
あてはめ
記録上、被告人が所論のような供述の強要や拷問等を受けたと疑わせるに足りる証跡は存在しない。したがって、違憲主張はその前提となる事実関係を欠いており、実質的には単なる法令違反や事実誤認の主張にすぎない。これらは刑事訴訟法405条所定の上告理由には当たらないと評価される。
事件番号: 昭和62(あ)557 / 裁判年月日: 昭和62年9月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自白の任意性に疑いがあるとする主張については、記録上、捜査官による暴行や脅迫等の事実を認めるに足りる証跡がない限り、憲法38条違反の前提を欠く。また、地方裁判所の判決は、刑事訴訟法405条3号にいう「判例」には当たらない。 第1 事案の概要:被告人および弁護人は、捜査官の暴行・脅迫等によって自白が…
結論
被告人の主張は前提を欠くため、憲法違反の主張は認められず、本件上告は棄却される。
実務上の射程
自白の任意性や捜査の適法性を争う際、具体的な証拠(証跡)による裏付けがない抽象的な違憲主張は、上告理由として適法に受理されないことを示す。答案作成上は、違憲主張の前提となる事実認定の重要性を確認する際に参照される。
事件番号: 昭和27(あ)45 / 裁判年月日: 昭和28年5月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑務所における受刑者の処遇が、直ちに憲法36条の「残虐な刑罰」に該当することはない。また、量刑不当や事実誤認の主張は、憲法違反の主張を形式的に伴うものであっても、適法な上告理由にはあたらない。 第1 事案の概要:被告人は、第一審判決の犯罪事実に不備がある点や、量刑が不当であることを不服として上告し…
事件番号: 昭和41(あ)1348 / 裁判年月日: 昭和41年11月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法38条3項が定める補強証拠の必要性は、犯罪事実(実体形成事実)について認められるものであり、情状に関する事実については補強証拠を必要としない。 第1 事案の概要:上告人は、被告人の自白に基づき認定された事実について、憲法38条3項違反を主張して上告した。具体的にどのような犯罪事実または情状事実…
事件番号: 昭和25(あ)941 / 裁判年月日: 昭和25年11月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法38条3項が規定する「本人の自白」に被告人の公判廷における供述は含まれず、補強証拠がなくとも公判廷での自白のみで犯罪事実を認定できる。 第1 事案の概要:被告人は第一審において犯罪事実を認める供述を行い、第一審判決はその公判廷における供述および検察官に対する供述調書を証拠として事実を認定した。…