判例違反の主張が欠前提及び事案異とされた事例
判旨
自白の任意性に疑いがあるとする主張については、記録上、捜査官による暴行や脅迫等の事実を認めるに足りる証跡がない限り、憲法38条違反の前提を欠く。また、地方裁判所の判決は、刑事訴訟法405条3号にいう「判例」には当たらない。
問題の所在(論点)
1. 捜査官の暴行・脅迫による自白の任意性欠如が認められるための要件。 2. 刑訴法405条3号にいう「判例」に地方裁判所の判決が含まれるか。
規範
1. 憲法38条2項及び刑訴法319条1項に基づく自白の任意性否定には、当該自白が不当な手段により得られたと疑うべき具体的証跡を要する。 2. 刑訴法405条3号所定の上告理由としての「判例」とは、最高裁判所、真にこれに代わるべき大審院、または控訴裁判所である高等裁判所の判例を指し、地方裁判所の判決はこれに含まれない。
重要事実
被告人および弁護人は、捜査官の暴行・脅迫等によって自白が強要されたと主張し、憲法38条(黙秘権・自白排除法則)および憲法36条(拷問の禁止)違反を理由に上告した。また、過去の裁判例として地方裁判所の判決を引用し、これに反することを判例違反の理由として主張した。
あてはめ
1. 記録を調査しても、被告人の自白が捜査官の暴行や脅迫によって得られたと疑うべき証跡は認められない。したがって、自白の任意性を否定する前提を欠いており、憲法違反の主張は当たらない。 2. 弁護側が引用した地方裁判所の判決は、刑訴法405条3号が定める「判例」に該当しないため、これを基準とした判例違反の主張は上告理由として不適法である。
結論
本件上告を棄却する。自白の任意性に疑いがあるとする主張は前提を欠き、地裁判決の引用は適法な上告理由に当たらない。
実務上の射程
自白の任意性を争う際の立証の程度として、単なる主張にとどまらず「疑うべき証跡」の存在が必要であることを示唆している。また、上告趣意書作成の実務において、判例違反を主張する際の適格な引用先(地裁判決の除外)を確認する際に有用である。
事件番号: 昭和27(あ)922 / 裁判年月日: 昭和28年6月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】警察における自白が暴行・脅迫によるものであると認めるべき形跡がない場合、憲法38条(自白の任意性)や憲法36条(拷問・残虐刑の禁止)への違反は認められない。 第1 事案の概要:被告人が警察において自白をしたが、弁護人は当該自白が暴行・脅迫によるものであり、憲法38条および36条に違反すると主張して…
事件番号: 昭和46(あ)1017 / 裁判年月日: 昭和48年4月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告趣意が判例の具体的摘示を欠く場合や、原審で主張・判断されていない憲法違反をいう場合などは、適法な上告理由にはあたらない。記録上、自白の任意性に疑いがない限り、憲法38条2項違反の主張も認められない。 第1 事案の概要:被告人A、B、Cおよびそれぞれの弁護人が上告を申し立てた事案である。被告人A…