判旨
検察官による冒頭陳述(刑訴法296条)において、証拠能力の認められない証拠について言及したり、公判で立証する意図のない事実を述べたりすることは、訴訟手続き上の違法を構成し得るが、直ちに憲法違反とはならない。
問題の所在(論点)
検察官が冒頭陳述において、証拠能力のない証拠や立証予定のない事実を述べる等、不適切な陳述を行った場合に、それが直ちに憲法違反、あるいは上告理由となる重大な訴訟法違反に該当するか。
規範
検察官の冒頭陳述は、公判における立証の指針を示すものであり、後に証拠として提出し得ないことが明らかな事項や、立証の意思がない事項を述べることは、刑事訴訟法296条の趣旨に反する訴訟法違反となり得る。
重要事実
被告人が刑事事件において起訴され、第1審の公判手続において検察官が冒頭陳述を行った。弁護人は、その冒頭陳述の内容に不適切な点があるとして、憲法違反および刑事訴訟法違反を理由に上告を申し立てた。
あてはめ
本件の上告趣意は憲法違反を主張するが、その実質は検察官の冒頭陳述の態様に関する訴訟法違反の主張にすぎない。最高裁は、先行する判例(昭和24年(れ)483号等)を引用しつつ、冒頭陳述の適否は訴訟手続の解釈問題であり、本件記録を精査しても刑事訴訟法411条を適用して判決を破棄すべき重大な違法は認められないと判断した。
結論
本件上告は棄却される。冒頭陳述の内容に関する不服は、単なる訴訟法違反の主張であり、適法な上告理由(刑訴法405条)には当たらない。
実務上の射程
検察官による冒頭陳述の逸脱(証拠能力のない証拠の引用等)を争う際、実務上は予断排除原則(刑訴規則165条等)との関連で議論されるが、最高裁はこれを原則として憲法問題ではなく訴訟法上の解釈問題として処理している。
事件番号: 昭和46(あ)757 / 裁判年月日: 昭和50年2月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】本決定は、憲法違反や判例違反を主張する上告について、実質が単なる法令違反や事実誤認の主張に過ぎない場合や、法律判断の当否が結論に影響しない場合には、適法な上告理由には当たらないと判断した。 第1 事案の概要:被告人が原判決に対し、憲法違反、判例違反、事実誤認、法令違反等を理由として上告を申し立てた…
事件番号: 昭和25(あ)2493 / 裁判年月日: 昭和26年9月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】本判決は、被告人の上告趣意が実質的に刑訴法411条の職権破棄事由を主張するにすぎず、適法な上告理由に当たらないとして上告を棄却したものである。 第1 事案の概要:被告人両名は、憲法違反を主張して上告を提起したが、その具体的な内容は、実質的には原判決に重大な事実誤認や法令違反があるといった刑訴法41…
事件番号: 昭和25(あ)158 / 裁判年月日: 昭和25年10月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】本決定は、刑事訴訟法405条の上告理由に該当しない主張を棄却し、かつ、記録を精査しても同法411条の職権破棄事由が認められないことを示したものである。 第1 事案の概要:被告人が有罪判決を受け上告したが、弁護人の上告趣意の内容が事実誤認および訴訟法違反を前提とする擬律錯誤(法の適用ミス)の主張であ…