判旨
非身分者が身分者の業務上横領行為に共犯として加功した場合、身分なき者には刑法65条の適用により刑が科されるが、業務上横領罪の成立自体は免れず、科される刑が単純横領罪の法定刑の範囲内であれば実質的な不利益はない。また、私文書偽造・同行使と業務上横領、有価証券偽造・行使と業務上横領の間には、特段の事情がない限り牽連犯の関係が認められる。
問題の所在(論点)
1. 業務上横領の共犯において、非身分者に刑法65条を適用せず業務上横領罪の条文のみを適用した判決の適法性。 2. 文書偽造・行使と横領罪との間に牽連犯の関係を認めるべきか。 3. 判示事項に一部の日時等の遺脱がある場合の判決の効力。
規範
1. 業務上横領罪(刑法253条)の身分を有しない者が、身分を有する者と共謀して同罪を犯した場合、刑法65条が適用される。この際、非身分者についても同罪の成立を前提としつつ、科される刑の範囲が検討される。 2. 偽造等の手段を用いて横領を行った場合、偽造・行使罪と横領罪との間には手段と結果の関係が認められ、牽連犯(刑法54条1項後段)として処断される。
重要事実
被告人は、身分者による業務上横領行為に共犯(刑法60条)として加担した。第一審判決は、刑法65条および252条(単純横領罪)を適用すべき場面において、253条(業務上横領罪)のみを適用して有罪とした。また、私文書偽造・同行使および有価証券偽造・行使の事実と、それに関連する業務上横領の事実について、判決文上で併合罪等の処理が明確に示されていなかったが、実質的には牽連犯として扱われていた。
あてはめ
1. 被告人には多数の業務上横領の事実があり、刑法253条の適用自体は免れない。また、実際に科された刑期が単純横領罪(252条)の刑期範囲内であるならば、判決に法令適用の不備があっても、刑訴法411条により破棄すべき事由には当たらない。 2. 判示の記載内容を総合すれば、偽造等と横領の間に牽連犯の関係を否定した趣旨とは解されず、擬律に違法はない。 3. 判文の一部に期間の記載漏れ(遺脱)があっても、別表等との照合により事実認定の範囲が特定できる場合は、その事実を含めて認定したものと解するのが相当である。
結論
本件上告を棄却する。法令適用の不備や判文の遺脱があっても、結論に影響を及ぼすような重大な違法は認められない。
実務上の射程
共犯と身分(刑法65条)に関する具体的事案での処理を示す。特に、非身分者に重い罪名の条文が適用されても、量刑が軽い罪の範囲内であれば破棄理由にならないという実務的判断基準を提示している。また、偽造罪と横領罪の罪数関係を牽連犯と解する実務慣行を確認する際にも参照される。
事件番号: 昭和32(あ)609 / 裁判年月日: 昭和35年6月24日 / 結論: 棄却
原判決は第一審判決をその科刑重きにすぎるとして破棄自判し、被告人の犯罪事実である第一審判決判示第一の各所為及び第三の所為につき、いずれも刑法第二五三条(第三の所為については更に同第六〇条をも適用)の業務上横領罪の規定を適用しているが、右第三の所為(註。業務上横領に加功した非業務者の加功行為)につき刑法二五三条を適用した…
事件番号: 昭和28(あ)3652 / 裁判年月日: 昭和30年4月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】業務上占有する他人の物を自己の利得のために処分する行為は、背任罪ではなく業務上横領罪を構成する。また、預金に際して実在する他人の氏名を使用したとしても、その名義人は虚無人とはいえない。 第1 事案の概要:被告人は、業務上の地位に基づき管理・占有していた金員を、自己の利益を図る目的で処分した(判示第…