判旨
競馬や競輪等の公営競技を認める特別法の存在によって、刑法の賭博罪規定が当然に失効したり、その合憲性が否定されたりすることはない。
問題の所在(論点)
競馬・競輪等の公認を理由に、刑法185条以下の賭博に関する罪の規定が効力を失い、あるいは違憲となるか。また、その合憲性を認めることが憲法37条1項に反するか。
規範
国家が特定の法律に基づき競馬や競輪等の賭博行為を公認・許容している場合であっても、それは当該特別法の範囲内での適法化を意味するに過ぎない。したがって、国家が一般に賭博罪を公認したと解することはできず、刑法の賭博罪規定が当然に失効したり、憲法に違反して無効となったりすることはない。
重要事実
被告人は賭博罪に問われたが、弁護人は、政府や都道府県が競馬や競輪等を法律で許容し公認している現状に鑑みれば、国家自身が一般に賭博を公認したものといえる、あるいは刑法の賭博罪規定は当然に失効したものであると主張した。また、これらを前提として、賭博罪の合憲性を認めた原判決は憲法37条1項の「公平な裁判所」による裁判ではないとして上告した。
あてはめ
競馬法や自転車競技法などの特別法により、特定の主体が行う特定の賭博行為が適法化されている事実は認められる。しかし、これらの立法は政策的判断に基づく限定的な除外例を設けたものに過ぎず、賭博行為全般を公認したものではない。したがって、一般の賭博を禁止し処罰する刑法の規定と、特別法による公認は矛盾するものではなく、刑法規定が失効したとの主張は前提において失当である。また、憲法37条1項の「公平な裁判所」とは組織構成に偏頗のない裁判所を指すところ、合憲な刑法規定を適用した原判決に憲法違反の点はない。
結論
刑法の賭博罪に関する規定は失効しておらず、合憲である。これに基づき有罪とした原判決に憲法37条1項違反はない。
実務上の射程
特別法による違法性阻却(刑法35条)の範囲を画定する際の基礎となる。公営競技等の存在を理由に賭博罪自体の存立を否定する主張は認められないことを明示した。答案上は、賭博罪の保護法益や公営競技との均衡が論じられる際、刑法規定の合憲性を担保する先例として参照し得る。
事件番号: 昭和25(あ)982 / 裁判年月日: 昭和26年5月1日 / 結論: 棄却
賭博及び富籖に関する行為が風俗を害し公共の福祉に反するものというべきこと勿論であつて、政府乃至都道府縣が自ら賭場開帳図利若しくは富籖罪と本質上同一の行為を為すこと自体が適法であるか否か又これを認める立法の当否は問題となるが原に犯罪行為と本質上同一である或る種の行為が行われているという事実並にこれを公認している立法がある…