賭博及び富籖に関する行為が風俗を害し公共の福祉に反するものというべきこと勿論であつて、政府乃至都道府縣が自ら賭場開帳図利若しくは富籖罪と本質上同一の行為を為すこと自体が適法であるか否か又これを認める立法の当否は問題となるが原に犯罪行為と本質上同一である或る種の行為が行われているという事実並にこれを公認している立法があるということだけから国家自身一般に賭博並に富籖に関する罪を公認したものとかこれが処罰を定めた刑法第二三章賭博及び富籖に関する各条項が当然に失効したものということはできない。(昭和二五年(れ)第二八〇号同年一一月二二日大法廷判決参照)。
政府乃至都道府縣が賭場開帳図利罪若しくは富籖罪と本質上同一行為を為すことによつて右賭博等の犯罪行為を公認したものといえるか―刑法第二三章の各条項は失効しない
刑法186条2項,刑法187条,憲法13条
判旨
公営競技等の立法により特定の賭博行為が許容されている事実があっても、刑法の賭博及び富籤に関する規定が当然に失効したり、国家が一般にこれらの行為を公認したりしたものとは解されない。
問題の所在(論点)
政府や地方自治体による公営競技等の実施やそのための立法がある場合、刑法186条等の賭博罪に関する規定は当然に失効し、一般の賭博行為も公認されたと解すべきか。
規範
賭博及び富籤に関する行為は、風俗を害し公共の福祉に反するものである。特定の公営競技等を認める特別法の存在や、行政主体が同種の行為を行う事実があったとしても、それだけで刑法第23章(賭博及び富籤に関する罪)の規定が当然に失効し、あるいは国家が一般にこれらの犯罪行為を公認したと解することはできない。
重要事実
被告人は常習賭博(刑法186条1項)の罪に問われた。これに対し弁護人は、政府や都道府県が自ら賭場開帳図利や富籤罪と本質的に同一の行為(公営ギャンブル等)を適法に行っている現状に照らせば、刑法186条等の規定は当然に失効しており、憲法違反であると主張して上告した。
あてはめ
賭博行為は本質的に公共の福祉に反する性質を有する。特定の立法により一部の行為が適法化されているという事実は、その特別法の範囲内での正当化を示唆するに過ぎない。したがって、そのような立法の存在や行政による同種行為の実施という事実だけから、刑法が予定する一般的禁止の規範が失効したと結論付けることは論理的飛躍であり、認められない。
結論
刑法186条が失効したとはいえず、被告人の常習賭博罪は成立する。
実務上の射程
特別法による違法性阻却(刑法35条)の範囲を論じる際の前提として、刑法の賭博禁止規定が現在も有効な一般規範であることを示す際に活用できる。また、法社会学的な状況変化(実効性の喪失)を理由とする法律の失効主張を否定する際の論拠となる。
事件番号: 昭和27(あ)39 / 裁判年月日: 昭和28年5月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】競馬や宝くじ等を公認する特別法の存在によって、直ちに刑法の賭博及び富くじに関する罪の規定が廃止されたものと解することはできない。 第1 事案の概要:被告人は、常習賭博の前科を有しており、昭和25年12月から昭和26年2月までの間に数回にわたって賭博を反復した。被告人側は、競馬、競輪、宝くじ等が法律…