判旨
複数の起訴状が提出された場合であっても、後から提出された起訴状が先行する起訴内容を単に補充する趣旨の書面と認められるときは、公訴提起の手続に違法はない。
問題の所在(論点)
先行する起訴がある中で、さらに「起訴状」と称される書面が提出された場合、それが独立した別個の起訴として扱われるべきか、あるいは先行の起訴を完結させるための補充書面として許容されるか。公訴提起の手続的適法性が問われた。
規範
検察官が裁判所に対し、既存の公訴提起を前提としてさらなる書面(起訴状の形式をとるものを含む)を提出した場合、その書面の性質が当初の起訴内容を補足・明確化する「補充」の性質を有するものである限り、二重起訴等の訴訟手続の規定に違反するものではない。
重要事実
被告人は、昭和26年1月頃から5月頃にかけて薬事法違反(ホスビタン販売)の罪を犯し、同年9月に覚せい剤取締法違反(所持)の罪を犯したとして起訴された。この際、弁護人は、第二の起訴状が提出されたことを指して訴訟手続の違法を主張したが、実態としては第一の起訴内容を補充する書面が提出されたという経緯であった。
あてはめ
本件において提出された第二の起訴状は、その内容を検討すると第一の起訴内容を補充する書面に過ぎないものと認められる。したがって、これは新たな独立した公訴の提起ではなく、先行する公訴提起の範囲を明確にするための手続的一環として行われたものと評価できる。
結論
本件の第二の起訴状は補充書面としての性質を有するにすぎないため、訴訟法上の違法はなく、上告は棄却される。
実務上の射程
起訴状の訂正や追起訴との区別が問題となる場面で、実質的に「補充」といえる場合には手続違法とならない旨を示す。ただし、被告人の防御権を侵害するような実質的な変更を伴う場合は、公訴事実の同一性や訴状変更手続(刑訴法312条)の適用の有無が別途問題となり得る。
事件番号: 昭和28(あ)2814 / 裁判年月日: 昭和30年5月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】判決における事実認定と証拠の対応関係について、判示の順序に従い挙示された証拠を逐次検閲することで、いずれの証拠によりいずれの事実が認定されたかを明らかにできる場合には、刑事訴訟法上の理由不備の違法はない。 第1 事案の概要:第一審判決に対し、被告人側が事実と証拠との関連性が不明確であるとして、刑事…
事件番号: 昭和31(あ)4748 / 裁判年月日: 昭和35年3月29日 / 結論: 棄却
昭和三一年一〇日頃譲渡したと認められた覚せい剤一、一〇〇本位および同年四月八日頃所持していたと認められた覚せい剤約二八一本が、同年一月初旬頃密造したと認められた覚せい剤約一、八〇〇本の一部であつたとしても、右譲渡および所持は、その方法態様において密造に当然随伴する行為とは認められないから、所論のように事後の処分行為と認…