法定の登録を受けることなく覚せい剤の製造を営む行為は、覚せい剤取締法第一五条、第四一条の罪にあたり、薬事法第二六条第一項、第五六条第一項の罪を構成するものではない。
法定の登録を受けることなく覚せい剤の製造を営む行為に対する擬律
覚せい剤取締法15条,覚せい剤取締法41条,薬事法26条1項,薬事法56条1項,刑法54条1項
判旨
被告人の自白と補強証拠を合わせて犯罪構成要件たる事実を認定できる場合、自白の各部分について個別に補強証拠を要しない。また、特定の行為を規制する特別法が制定され、その処罰により取締目的を達し得る場合には、一般法との関係は法条競合となり、特別法のみが適用される。
問題の所在(論点)
1. 犯罪事実の細部(数量)の認定に、自白以外の補強証拠が必要か。 2. 覚せい剤製造行為に対し、薬事法と覚せい剤取締法が重畳的に適用されるのか、それとも法条競合として後者のみが適用されるのか。
規範
1. 憲法38条3項の補強証拠について:被告人の自白と補強証拠とを相まって全体として犯罪構成要件たる事実を認定し得る場合には、自白の各部分(数量等の細部)について一々補強証拠を要するものではない。 2. 法条競合について:一般法(薬事法)の規制対象の一部について、より重い刑罰を科し、かつその処罰によって取締目的を達し得る特別法(覚せい剤取締法)が制定された場合、当該行為については特別法のみが適用される。
重要事実
被告人が覚せい剤を製造した行為について、原審は薬事法違反(無登録製造)と覚せい剤取締法違反(無指定製造)が観念的競合(一所為数法)の関係にあると判断した。また、認定された医薬品の数量について、被告人の自白のみに基づいて認定が行われていた。
あてはめ
1. 補強証拠について:第一審判決は犯罪事実全体については補強証拠を挙げており、これらと自白を合わせれば構成要件たる事実を認定できる。したがって、数量の点についてのみ自白に基づいたとしても、憲法38条3項に違反しない。 2. 法の適用について:覚せい剤取締法は薬事法による規制の後に制定され、指定制度を設けて無指定製造を禁じている。同法の刑は薬事法より重く、覚せい剤の製造に関する限り、同法による処罰で取締目的を達し得る。よって、覚せい剤の製造は専ら覚せい剤取締法によって処罰されるべきであり、薬事法違反罪は成立しない。
結論
1. 自白の細部(数量)に個別の補強証拠は不要であり、有罪認定は適法である。 2. 原判決が薬事法違反罪の成立を認めた点には法令解釈の誤りがあるため、破棄差し戻しを免れない。
実務上の射程
自白の補強証拠の範囲については、実務上「実質説」の立場を確認するものとして重要である。また、特別法と一般法の関係(法条競合)において、後法の趣旨や罰則の重層性を比較して適用範囲を限定する解釈手法を示しており、罪数論における論証に活用できる。
事件番号: 昭和28(あ)2814 / 裁判年月日: 昭和30年5月10日 / 結論: 棄却
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事件番号: 昭和27(あ)3376 / 裁判年月日: 昭和28年2月26日 / 結論: 棄却
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