刑訴二二七条により証人尋問をした裁判官は事件の審判から除斥されるものでもなく、所論裁判官は本件訴訟手続において忌避の申立を受けた事実もないのであり、且つ所論証人尋問調書を証拠とすることには被告弁護人も同意しているのであるから、公平な裁判所でないとの所論は採るを得ない。
刑訴二二七条により証人訊問した裁判官による裁判と公平な裁判所の裁判
刑訴法227条,刑訴法20条,刑訴法21条,憲法37条1項
判旨
刑法訴訟法227条に基づき証人尋問を行った裁判官は、当該事件の審判から当然に除斥されるものではなく、被告人・弁護人の同意がある等の事情があればその調書を証拠とすることができる。
問題の所在(論点)
刑事訴訟法227条に基づき証人尋問を行った裁判官が、同一事件の公判審理に関与することは許されるか。また、その裁判官が作成した証人尋問調書を証拠とすることができるか。
規範
刑事訴訟法20条各号に掲げられる除斥事由は限定列挙であり、同法227条の規定に基づき受命裁判官として証人尋問を行った事実は、同法20条各号のいずれにも該当しない。また、裁判官に不公平な裁判をするおそれがある場合には忌避の手続きによるべきであり、それがない限り、当該裁判官が公判に関与しても手続上違法とはならない。さらに、当該尋問調書の証拠能力は、当事者の同意(刑訴法326条)等の証拠則に従って判断される。
重要事実
被告人の刑事事件において、ある裁判官が刑事訴訟法227条(被告人側の請求による証人尋問)に基づき証人尋問を実施した。その後、同一の裁判官が本案事件の審判に関与した。被告人側は、この裁判官の関与が憲法等に違反するとして上告したが、第一審または控訴審の段階で当該裁判官に対する忌避の申立てはなされていなかった。また、問題となった証人尋問調書を証拠とすることについて、被告人および弁護人は同意を与えていた。
あてはめ
本件において、証人尋問を行った裁判官は刑事訴訟法20条所定の除斥事由に該当しない。また、記録上、被告人側から当該裁判官に対して忌避の申立てがなされた事実は認められない。さらに、証拠調べの手続きにおいても、被告人および弁護人は当該証人尋問調書を証拠とすることに同意を与えている。したがって、当該裁判官が審判に関与したこと、および当該調書を証拠として採用したことに、憲法違反や訴訟手続上の違法は認められない。
結論
刑訴法227条の証人尋問を行った裁判官は除斥されず、忌避の申立てや証拠採用への異議がない限り、その関与および調書の証拠採用は適法である。
実務上の射程
裁判官が予断を抱く可能性がある予備手続に関与した場合でも、除斥事由(刑訴法20条)に当たらない限り当然には排除されないことを示す。答案上は、裁判の公平性を争う場面で、除斥事由の限定性と忌避制度・証拠同意による手続的補完の関係を論じる際に活用できる。
事件番号: 昭和26(あ)2378 / 裁判年月日: 昭和27年10月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】逮捕状を発付した裁判官が、被疑者の前科や犯罪事実をあらかじめ認識していたとしても、それだけで「被告人が事件の基礎となった取調べに関与した」ことにはならず、裁判官の除斥事由(刑訴法20条7号)には該当しない。 第1 事案の概要:被告人が刑事裁判に付された際、第一審で逮捕状を発付したA裁判官が審判に関…
事件番号: 昭和23(れ)833 / 裁判年月日: 昭和24年5月18日 / 結論: 棄却
しかし、憲法第三七條第二項に、刑事被告人はすべての證人に對し審問の機會を充分に與えられると規定しているのは、裁判所の職權により又は訴訟當事者の請求により喚問した證人につき、反對訊問の機會を充分に與えなければならないと言うのであつて、被告人に反對訊問の機會を與えない證人其他の者(被告人を除く)の供述を録取した書類は絶對に…
事件番号: 昭和28(あ)536 / 裁判年月日: 昭和29年8月20日 / 結論: 棄却
所論は、第一審裁判所が被告人に対し、黙秘権を告げる前に、学校はどこまで行つたか等と尋問したこと、並びに証拠調に際し弁護人申請にかゝる証人からその取り調べを開始したことを捉え予断をもつて審理に当つたものであるから右は憲法三七条一項にいわゆる公平な裁判所の裁判とはいえないというのであるが、一審裁判所の右措置が何等違法でない…
事件番号: 昭和27(あ)6500 / 裁判年月日: 昭和28年7月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所は、被告人側が申請した証人のすべてを必ずしも取り調べる義務を負うものではない。本件では、被告人が主張する証人尋問の不実施は憲法違反には当たらず、上告は棄却された。 第1 事案の概要:被告人は第一審または控訴審において証人の取調べを申請したが、裁判所がそのすべてを採用しなかった。これに対し、被…