判旨
逮捕状を発付した裁判官が、被疑者の前科や犯罪事実をあらかじめ認識していたとしても、それだけで「被告人が事件の基礎となった取調べに関与した」ことにはならず、裁判官の除斥事由(刑訴法20条7号)には該当しない。
問題の所在(論点)
逮捕状を発付した裁判官が、後の公判手続に関与することは、刑事訴訟法20条7号の除斥事由(事件の基礎となった取調べへの関与)に該当するか。
規範
刑事訴訟法20条7号にいう「裁判官が事件について…その基礎となつた取調べ…に関与したとき」とは、裁判官が当該事件の証拠収集や捜査過程に直接関与し、予断を抱くおそれがある場合を指す。単に逮捕状の請求に基づき令状を発付する過程で被疑者の事実関係や前科を認識したに過ぎない場合は、これに含まれない。
重要事実
被告人が刑事裁判に付された際、第一審で逮捕状を発付したA裁判官が審判に関与した。弁護人は、A裁判官が逮捕状請求に添付された証拠資料によって被告人の前科や犯罪事実をあらかじめ審理したはずであり、これは「事件の基礎となった取調べ」に関与した裁判官の除斥事由に該当すると主張して、訴訟手続の違反を訴えた。
あてはめ
本件において、逮捕手続書の記載等から判断すると、A裁判官が逮捕状の請求に際して特定の証拠資料を精査し、被告人の前科や犯罪事実を予断が生じるほど詳細に審理した事実は認められない。したがって、逮捕状の発付という令状裁判官としての職務遂行は、直ちに「本件の基礎となった取調べに関与した」とは評価できない。また、記録上も前科等について十分な審理が尽くされており、不当な予断による影響は見られない。
結論
逮捕状を発付した裁判官が公判に関与しても、特段の事情がない限り、刑訴法20条7号の除斥事由には該当せず、訴訟手続は適法である。
実務上の射程
事件番号: 昭和27(あ)1327 / 裁判年月日: 昭和28年4月16日 / 結論: 棄却
刑訴二二七条により証人尋問をした裁判官は事件の審判から除斥されるものでもなく、所論裁判官は本件訴訟手続において忌避の申立を受けた事実もないのであり、且つ所論証人尋問調書を証拠とすることには被告弁護人も同意しているのであるから、公平な裁判所でないとの所論は採るを得ない。
裁判官の除斥・忌避に関する答案において、令状発付と公判関与の分離を論じる際に用いる。実務上、令状発付は「取調べ」に含まれないとするのが通説・判例の確立した立場であり、本判決はその基礎となる判断を示している。答案では「事件の基礎となった取調べ」の定義を厳格に解釈する際の根拠として活用する。
事件番号: 昭和26(れ)2040 / 裁判年月日: 昭和27年3月13日 / 結論: 棄却
判決言渡期日に被告人、弁護人を召喚しなかつた違法があつても、被告人が自白しておつて、弁護人も犯情について弁論したに止まり、被告人も別に陳述することがないとして弁論が終結された場合には、その違法は判決に影響があるとはいえない。
事件番号: 昭和25(れ)1218 / 裁判年月日: 昭和25年11月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法37条1項の「公平な裁判所」とは組織や構成が中立的な裁判所を指し、同条2項は裁判所の証拠採否に関する裁量を妨げるものではない。 第1 事案の概要:被告人が刑事事件において証拠調べの範囲や限度につき不当であると主張し、憲法37条1項および2項に違反するとして上告した事案。原審において特定の証拠調…
事件番号: 昭和27(あ)3578 / 裁判年月日: 昭和28年11月30日 / 結論: 棄却
捜索差押調書は捜索差押許可状と共に提出しなければ証拠能力を欠くということはない。