判旨
刑事訴訟法226条及び227条の規定に基づき証人尋問を行った裁判官は、同法20条各号に掲げる除斥事由には該当しない。
問題の所在(論点)
刑事訴訟法226条または227条に基づき、起訴前に証人尋問を行った裁判官が、同一事件の公判審理に関与することは、同法20条に定める除斥事由に該当するか。
規範
刑事訴訟法20条各号は裁判官が職務の執行から除斥される場合を限定的に列挙している。同条の規定に照らせば、捜査段階において裁判官が同法226条(証拠収集の申出による証人尋問)または227条(証人尋問の請求)に基づき証人尋問を行ったとしても、それは直ちに同法20条各号のいずれかに該当するものではない。
重要事実
被告人A、B、C、Dらに対し刑事裁判が行われ、有罪判決が下された。被告人Aの弁護人は上告趣意において、原審等で証人尋問(刑事訴訟法226条、227条に基づくもの)を担当した裁判官が、その後の公判審理に関与することは除斥事由に該当し、訴訟手続に違法があると主張して上告した。
あてはめ
刑事訴訟法20条は、裁判の公正を確保するために裁判官が関与すべきでない事由を規定している。しかし、証拠保全の一環として行われる226条、227条の証人尋問への関与は、同条各号(特に第7号の「前審の裁判」等)には含まれない。本件において弁護人が主張する事由は、条文の文言上、除斥事由として掲げられていないことが明らかである。したがって、当該裁判官が公判に関与することに法的な妨げはない。
結論
刑事訴訟法226条、227条により証人尋問をした裁判官は除斥の事由とならないため、上告は棄却される。
実務上の射程
事件番号: 昭和27(あ)1327 / 裁判年月日: 昭和28年4月16日 / 結論: 棄却
刑訴二二七条により証人尋問をした裁判官は事件の審判から除斥されるものでもなく、所論裁判官は本件訴訟手続において忌避の申立を受けた事実もないのであり、且つ所論証人尋問調書を証拠とすることには被告弁護人も同意しているのであるから、公平な裁判所でないとの所論は採るを得ない。
裁判官の除斥事由(刑訴法20条)が限定列挙であることを確認する際の実務的根拠となる。特に、予断が生じるおそれがある捜査段階の関与であっても、法が明示しない限り除斥事由とはならないという厳格な解釈を示すものとして、答案上は除斥・忌避の論点で活用できる。
事件番号: 昭和30(あ)3706 / 裁判年月日: 昭和33年6月3日 / 結論: 棄却
所論共犯Aに対する第一回公判期日前の証人尋問調書は、本件第一審裁判所の裁判官が刑訴二二七条の規定による検察官の請求に基き自ら証人尋問をなした上作成されたものであること所論のとおりであるところ、同条による証人尋問をした裁判官は当該被告事件の審判から除斥されるものではないことは当裁判所の判例(昭和二九年(あ)第一三九六号、…
事件番号: 昭和30(あ)16 / 裁判年月日: 昭和33年5月2日 / 結論: 棄却
刑訴二二六条又は同二二七条による証人尋問をした裁判官は当該被告事件の審判から除斥されるものでないことも当裁判所の判例(昭和二九年(あ)第一三九六号同三〇年三月二五日第二小法廷判決、集九巻三号五一九頁)の趣旨に徴して明らかである