刑訴二二六条又は同二二七条による証人尋問をした裁判官は当該被告事件の審判から除斥されるものでないことも当裁判所の判例(昭和二九年(あ)第一三九六号同三〇年三月二五日第二小法廷判決、集九巻三号五一九頁)の趣旨に徴して明らかである
刑訴法第二二六条又は同条第二二七条による裁判官の証人尋問と除斥原因
刑訴法226条,刑訴法227条,刑訴法20条
判旨
共同被告人であっても、事件を分離すれば他の共同被告人の被告事件において証人として証言させることができ、また、公判前証人尋問に関与した裁判官が当該被告事件の審判に関与しても除斥の対象とはならない。
問題の所在(論点)
1. 事件を分離した共同被告人を、他の共同被告人の被告事件において証人として尋問できるか。2. 公判前に証人尋問を行った裁判官は、刑事訴訟法上の除斥事由に該当するか。
規範
1. 共同被告人の証人適格について:共同被告人であっても、その被告事件が分離されている場合には、他の共同被告人の被告事件において証人としての資格を有する。この際、証人は自己が刑事訴追を受け、または有罪判決を受けるおそれのある証言を拒絶し得ることで、自己負罪拒否特権が保障される。2. 裁判官の除斥について:刑事訴訟法226条または227条に基づき公判前に証人尋問を行った裁判官であっても、当該被告事件の審判から当然に除斥されるものではない。
重要事実
被告人A、B、Cは共同被告人として起訴された。手続過程において、一部の被告人の事件が分離され、他の被告人の事件において証人として尋問が行われた。また、公判前に証人尋問に関与した裁判官が、そのまま本案の審理に関与した。これに対し弁護人は、共同被告人を証人として尋問することの適法性や、当該裁判官が審判に関与することの是非をめぐり、憲法38条1項(自己負罪拒否特権)違反等を理由に上告した。
事件番号: 昭和26(れ)204 / 裁判年月日: 昭和26年5月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】共犯者である共同被告人の各自白は、互いに他の被告人の自白の補強証拠となり得る。また、裁判所の公判廷における被告人の自白は、憲法38条3項にいう「自白」には当たらないため、補強証拠がなくともそれのみで有罪の証拠とすることができる。 第1 事案の概要:被告人らは共犯関係にあり、刑事裁判においてそれぞれ…
あてはめ
1. 共同被告人の証人適格について:被告事件を分離した以上、その被告人は第三者の立場に置かれるため、証人適格が認められる。この場合、自己に不利益な証言を拒絶できる権利(刑訴法146条)により防御権の保障は図られているため、手続上の違法はない。2. 裁判官の除斥について:過去の判例(昭和30年3月25日判決)の趣旨に照らし、公判前の証人尋問への関与は、法が定める除斥事由には該当しない。また、本件記録上、当該裁判官に対する忌避の申立てがなされた事実も認められないため、手続を継続することに問題はない。
結論
共同被告人を分離して証人尋問することは適法であり、公判前証人尋問に関与した裁判官が審判に関与することも除斥事由に当たらず、いずれも違法ではない。
実務上の射程
共同被告人の証人適格の有無が問題となる答案において、事件分離があれば証人として尋問可能である根拠として活用する。また、裁判官の除斥事由(刑訴法20条各号)の解釈において、予断を生じさせる可能性のある行為であっても、法定の事由に当たらない限り除斥されないとする実務上の準則として引用する。
事件番号: 昭和26(れ)2416 / 裁判年月日: 昭和27年5月23日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】憲法38条3項にいう「自白」には、受訴裁判所の公判廷における自白は含まれないが、前審等の他の裁判所の公判廷における自白はこれに含まれるため、一審の自白のみで有罪を認定することは許されない。 第1 事案の概要:控訴審判決(原判決)は、第一審判決の事実摘示及び証拠を引用して有罪を認定した。その証拠には…
事件番号: 昭和26(れ)654 / 裁判年月日: 昭和26年10月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】供述が検察事務官の強制に基づくものであるとの主張があっても、記録上その強制の事実が認められない限り、当該供述録取書の証拠能力は否定されない。自白の任意性に疑いがない以上、憲法違反の問題も生じない。 第1 事案の概要:被告人Aは、第一審および原審の公判廷において、本件の検察事務官による聴取書(供述録…