判旨
判決に関与した裁判官が、判決の基本となった公判の審理に関与した者であることは、公判調書の記載により明らかであり、これに異議がなければ、判決に関与しなかった裁判官が関与したという違法はない。
問題の所在(論点)
判決に関与した裁判官が、審理に関与した裁判官と同一であるか否かをいかなる資料に基づき判断すべきか、また、その判断において公判調書の記載がどのような意義を持つかが問題となる。
規範
判決に関与した裁判官が、その判決の基礎となる公判の審理に関与していたか否かは、公判調書の記載に基づいて判断される。当該公判調書の記載の正確性について異議の申立てがなされていない限り、その記載内容に従って判断されるべきである。
重要事実
被告人が公文書偽造等の罪で起訴された事案において、第一審判決原本には三名の裁判官が署名押印していた。弁護人は、審理に関与していない裁判官が判決に関与したとして憲法違反を主張したが、第一審の第八回及び第九回公判調書には、判決に関与した当該三名の裁判官が審理に関与した旨が記載されており、その正確性について異議が申し立てられた形跡もなかった。
あてはめ
本件では、第一審判決に関与した裁判長及び裁判官の計三名は、いずれも第八回・第九回の公判審理に関与したことが各公判調書の記載によって明らかである。記録上、これらの公判調書の記載の正確性について異議が申し立てられた形跡はないため、調書の記載通りの事実が認められる。したがって、判決に関与しなかった裁判官が判決に関与したという事実は認められず、憲法違反や違法の主張は前提を欠くというべきである。
結論
判決には審理に関与しなかった裁判官が判決に関与した違法はない。ただし、一部の公訴事実について大赦があったため、職権により原判決を破棄し、当該部分を免訴とした上で、残る公文書偽造の罪について有罪を言い渡す。
事件番号: 昭和25(れ)1554 / 裁判年月日: 昭和26年2月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公判調書に公開を禁じた旨の記載がない限り、公判は公開して行われたものと解すべきである。また、被告人が公判廷で一審判決の事実関係を認めた供述は、その事実を認定する適法な証拠となり得る。 第1 事案の概要:被告人らは、窃取された物件が連合国占領軍の財産であることを争い、原審の事実認定に証拠がないと主張…
実務上の射程
裁判所の構成の適法性を争う際、公判調書の記載が絶対的な証明力(刑訴法52条参照)を有することを確認した事例として位置づけられる。実務上は、裁判官の交代があった場合に、更新手続(刑訴規則187条等)が適正に行われたか、署名押印した裁判官と審理担当者が一致しているかを、まず公判調書から確認する際のリファレンスとなる。
事件番号: 昭和25(あ)3164 / 裁判年月日: 昭和27年2月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所が供述者の所在不明を判断するに際しては、特定の書面の記載のみに拘束されることなく、諸般の事情を調査した上で総合的に決定すべきである。 第1 事案の概要:被告人は所持罪等の容疑で起訴された。第一審において、証人Aの供述録取書等を証拠とするに際し、裁判所はAが所在不明であると判断した。これに対し…
事件番号: 昭和25(あ)2729 / 裁判年月日: 昭和26年11月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の公判廷での自白に対し、捜査機関作成の差押調書や領収書等は、独立の証拠として自白の真実性を担保する補強証拠になり得る。また、現行犯逮捕から数日後に録取された供述調書は、不当に長い抑留・拘禁後の自白には当たらない。 第1 事案の概要:被告人Cは、第一審の公判廷において犯行を自白した。これに対し…
事件番号: 昭和22(れ)260 / 裁判年月日: 昭和23年3月13日 / 結論: 棄却
原審第一回公判調書には被告人の年齡として大正六年一月三〇日生と記載されていることは所論の通りであるが之を被告人の身上取調書その他本件記録に徴するときは右は大正六年八月三〇日生の誤記であること明であり原判決は其の正しきに從つて大正六年八月三〇日生と表示したものであるから原判決には所論のように被告人の年齡を明にしなかつたと…
事件番号: 昭和28(あ)1613 / 裁判年月日: 昭和29年8月20日 / 結論: 棄却
一 被疑者の供述調書に供述拒否権を告知した旨の記載がないからといつて、直ちにこの告知がなかつたとはいえない。 二 捜査機関の作成する被疑者の供述調書は刑訴第一九八条の適用を受け、刑訴規則第三九条の適用は受けない。 三 法律条証拠能力のある書面については、これを証拠とすることに同意するかどうかを確める必要はない。