一 被疑者の供述調書に供述拒否権を告知した旨の記載がないからといつて、直ちにこの告知がなかつたとはいえない。 二 捜査機関の作成する被疑者の供述調書は刑訴第一九八条の適用を受け、刑訴規則第三九条の適用は受けない。 三 法律条証拠能力のある書面については、これを証拠とすることに同意するかどうかを確める必要はない。
一 被疑者の供述調書に供述拒否権の告知の記載がないときは右告知がなかつたことになるか 二 捜査機関の作成する被疑者の供述調書には刑訴規則第三九条が適用されるか 三 証拠能力ある書面についてもこれを証拠とすることの同意を確めることを要するか
刑訴法198条,刑訴法326条,刑訴規則39条
判旨
被告人本人の供述調書は、同意の有無にかかわらず刑事訴訟法322条により証拠能力が認められる。一方、相被告人の司法警察員に対する供述調書を、被告人に対する証拠として同意なく同条で取り調べることは誤りであるが、他の適法な証拠により事実認定が可能であれば判決に影響を及ぼさない。
問題の所在(論点)
1.被告人本人の供述調書の証拠調べにおいて、被告人の同意は不可欠か。2.相被告人の司法警察員に対する供述調書を、被告人の同意なく刑事訴訟法322条によって取り調べることの可否。
規範
被告人本人の供述を録取した書面は、刑事訴訟法322条の要件を満たす限り、証拠調べに関する被告人の同意の有無にかかわらず証拠能力を有する。これに対し、相被告人の供述調書は、被告人との関係では伝聞証拠(同法321条1項等)として扱われるべきであり、被告人の同意なく同法322条を直接適用して被告人に対する証拠とすることはできない。
重要事実
被告人および相被告人らが、司法警察員および検察官に対して供述調書を作成した。原審は、これらの供述調書を証拠として採用したが、被告人の同意の有無を区別せず、また相被告人の司法警察員に対する供述調書を、被告人の同意がないまま被告人に対する証拠として採用した。弁護人は、供述拒否権の告知欠如や刑訴規則39条違反、および同意なき採用の違法を主張して上告した。
事件番号: 昭和27(あ)6056 / 裁判年月日: 昭和29年4月20日 / 結論: 棄却
所論は憲法三八条刑訴三一九条違反を主張し、その論拠として捜査官A作成の犯罪捜査報告書は証拠能力を欠き被告人の自白に対する補強証拠たり得ないというに帰する。しかし右報告書(英文及び翻訳文)は、原判決の判示するとおり、第一審判決が、これを刑訴三二一条一項三号の要件を具備する書面に当るものと認めたことは正当であつて、その判断…
あてはめ
被告人自身の供述調書については、法律が定める要件を満たせば同意なくして証拠能力を持つため、手続に違法はない。相被告人の警察官面前調書については、被告人との関係では本来同意なく同法322条を適用して証拠とすることは誤りである。しかし、本件では同一内容の検察官面前調書が適法に存在し、これによって犯罪事実を認定可能であるため、警察官面前調書を併せて総合的に有罪認定したとしても、判決に影響を及ぼす重大な違法とはいえない。
結論
被告人自身の調書は同意不要で証拠能力がある。相被告人の警察官面前調書を被告人に対し同意なく322条で採用した点は不当であるが、他の証拠で事実が補完されている本件では判決に影響せず、上告は棄却される。
実務上の射程
伝聞例外の基本的枠組みを示す。特に被告人本人の供述(322条)と、共同被告人を含む第三者の供述(321条)の区別を明確にする必要がある。答案上は、共同被告人の供述を被告人の不利な証拠とする際、原則として321条1項各号または326条の同意が必要であることを論じる際の反面教師的な参照判例となる。
事件番号: 昭和25(あ)2729 / 裁判年月日: 昭和26年11月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の公判廷での自白に対し、捜査機関作成の差押調書や領収書等は、独立の証拠として自白の真実性を担保する補強証拠になり得る。また、現行犯逮捕から数日後に録取された供述調書は、不当に長い抑留・拘禁後の自白には当たらない。 第1 事案の概要:被告人Cは、第一審の公判廷において犯行を自白した。これに対し…
事件番号: 昭和25(あ)3164 / 裁判年月日: 昭和27年2月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所が供述者の所在不明を判断するに際しては、特定の書面の記載のみに拘束されることなく、諸般の事情を調査した上で総合的に決定すべきである。 第1 事案の概要:被告人は所持罪等の容疑で起訴された。第一審において、証人Aの供述録取書等を証拠とするに際し、裁判所はAが所在不明であると判断した。これに対し…
事件番号: 昭和26(れ)59 / 裁判年月日: 昭和26年4月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の公判廷における供述は、憲法38条3項にいう「本人の自白」には含まれず、補強証拠を要することなく有罪判決の証拠とすることができる。 第1 事案の概要:被告人は、連合国占領軍の財産に属する薬品「ダイヤヂン」の買受けに関し、盗品等譲受けの罪(または類似の法令違反)で起訴された。被告人は公判廷にお…
事件番号: 昭和24(れ)2542 / 裁判年月日: 昭和25年3月7日 / 結論: 棄却
昭和二二年政令第一六護號にいわゆる「收受」とは同令第一條所定の財産につき所持即ち實力的支配關係(昭和二三年(れ)第九五六號同二四年五月一八日最高裁判所大法廷判決參照)を承繼的に取得する意味に解すべきである。