所論は憲法三八条刑訴三一九条違反を主張し、その論拠として捜査官A作成の犯罪捜査報告書は証拠能力を欠き被告人の自白に対する補強証拠たり得ないというに帰する。しかし右報告書(英文及び翻訳文)は、原判決の判示するとおり、第一審判決が、これを刑訴三二一条一項三号の要件を具備する書面に当るものと認めたことは正当であつて、その判断に誤りはない。従つて右報告書は証拠能力がないという見解を基礎とする違憲の主張は、その前提を欠くことに帰し、採用することはできない。
犯罪捜査報告書の証拠能力
刑訴法321条1項3号
判旨
捜査官が作成した犯罪捜査報告書であっても、刑事訴訟法321条1項3号の要件を具備する場合には証拠能力が認められ、自白の補強証拠となり得る。
問題の所在(論点)
捜査官が作成した犯罪捜査報告書について、刑事訴訟法321条1項3号の要件を具備する場合に証拠能力を認めることができるか。また、それが自白の補強証拠となり得るか。
規範
伝聞例外(刑訴法321条1項3号)の要件、すなわち、①供述不能(死亡、精神若しくは身体の故障、所在不明又は国外にいること)、②供述が不可欠(犯罪事実の証明に欠くことができないこと)、③特信情況(特に可信すべき情況の下にされたものであること)の各要件を満たす書面については、証拠能力が認められる。
重要事実
被告人Cの刑事事件において、捜査官Aが作成した犯罪捜査報告書(英文及び翻訳文)が証拠として提出された。弁護人は、当該報告書は証拠能力を欠き、被告人の自白に対する補強証拠(憲法38条3項、刑訴法319条2項)たり得ないと主張して上告した。第一審判決は、当該報告書を刑訴法321条1項3号の要件を具備する書面と認め、原判決もこれを維持していた。
事件番号: 昭和25(あ)2729 / 裁判年月日: 昭和26年11月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の公判廷での自白に対し、捜査機関作成の差押調書や領収書等は、独立の証拠として自白の真実性を担保する補強証拠になり得る。また、現行犯逮捕から数日後に録取された供述調書は、不当に長い抑留・拘禁後の自白には当たらない。 第1 事案の概要:被告人Cは、第一審の公判廷において犯行を自白した。これに対し…
あてはめ
本件の犯罪捜査報告書(英文及び翻訳文)は、第一審判決が認定した通り、刑訴法321条1項3号に規定される「供述不能」「不可欠性」「特信情況」の要件を具備している。このように適法に伝聞例外の要件を満たした書面は証拠能力を有する。したがって、証拠能力がある以上、自白に対する補強証拠として用いることも憲法及び刑訴法上許容されると解される。被告人の弁解(犯意の欠如)についても、原審は証拠の取捨選択により措信できないと合理的に判断しており、審理不尽の違法はない。
結論
捜査官作成の犯罪捜査報告書であっても、刑訴法321条1項3号の要件を満たす限り証拠能力が認められ、自白の補強証拠とすることができる。
実務上の射程
実務上、捜査報告書は本来321条3項(検挙・検証)の枠組みで検討されることが多いが、本判決は3号(書面一般)の要件適合性を肯定し証拠能力を認めた点に意義がある。答案上は、伝聞例外の各要件(特に特信情況)を具体的事実から検討した上で、証拠能力の有無を導くプロセスを重視すべきである。
事件番号: 昭和28(あ)1613 / 裁判年月日: 昭和29年8月20日 / 結論: 棄却
一 被疑者の供述調書に供述拒否権を告知した旨の記載がないからといつて、直ちにこの告知がなかつたとはいえない。 二 捜査機関の作成する被疑者の供述調書は刑訴第一九八条の適用を受け、刑訴規則第三九条の適用は受けない。 三 法律条証拠能力のある書面については、これを証拠とすることに同意するかどうかを確める必要はない。
事件番号: 昭和25(あ)3164 / 裁判年月日: 昭和27年2月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所が供述者の所在不明を判断するに際しては、特定の書面の記載のみに拘束されることなく、諸般の事情を調査した上で総合的に決定すべきである。 第1 事案の概要:被告人は所持罪等の容疑で起訴された。第一審において、証人Aの供述録取書等を証拠とするに際し、裁判所はAが所在不明であると判断した。これに対し…
事件番号: 昭和25(あ)3387 / 裁判年月日: 昭和26年9月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の自白が、強制、拷問、脅迫によるものでなく、また不当に長く抑留または拘禁された後のものでない限り、その自白の真実性を裏付けるに足りる補強証拠が存在すれば、自白と併せて事実を認定することができる。 第1 事案の概要:被告人は昭和24年9月13日、窃盗容疑で逮捕状の執行を受け、同日中に警察署で取…
事件番号: 昭和25(れ)1554 / 裁判年月日: 昭和26年2月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公判調書に公開を禁じた旨の記載がない限り、公判は公開して行われたものと解すべきである。また、被告人が公判廷で一審判決の事実関係を認めた供述は、その事実を認定する適法な証拠となり得る。 第1 事案の概要:被告人らは、窃取された物件が連合国占領軍の財産であることを争い、原審の事実認定に証拠がないと主張…