原審第一回公判調書には被告人の年齡として大正六年一月三〇日生と記載されていることは所論の通りであるが之を被告人の身上取調書その他本件記録に徴するときは右は大正六年八月三〇日生の誤記であること明であり原判決は其の正しきに從つて大正六年八月三〇日生と表示したものであるから原判決には所論のように被告人の年齡を明にしなかつたという違法はない。
判決書に記載すべき被告人の年齡
旧刑訴法69條
判旨
公判調書に被告人の年齢が誤記されている場合であっても、記録全体から正しい年齢が判明し、判決において正しく示されているのであれば、事実誤認や審理不尽の違法はない。
問題の所在(論点)
公判調書の記載と判決書の記載が食い違っている場合、被告人の特定や責任能力の前提となる年齢等の事実認定に違法が生じるか。
規範
公判調書の記載に誤りがある場合であっても、身上取調書その他の記録に照らしてそれが明白な誤記であると認められ、判決が客観的事実に基づき適正になされているならば、手続上の違法とはならない。
重要事実
原審の第一回公判調書には、被告人の生年月日が大正6年1月30日と記載されていた。しかし、判決書には大正6年8月30日生と記載されていたため、弁護人は年齢が不明確なまま判決を下した違法があると主張して上告した。なお、身上取調書等の記録によれば正しい生年月日は後者であった。
事件番号: 昭和23(れ)619 / 裁判年月日: 昭和23年10月16日 / 結論: 棄却
原判決の事實摘示と、これが採證の用に供した各始末書、申述書の記載との間に、被告人が僞造轉出證明書に使用した架空人物の氏名不一致の點がありとしても、作成名儀人その他本件僞造文書の重大な要素についての記載内容において、兩者が一致する以上、右判示を違法とすることはできない。
あてはめ
原審の公判調書における「1月30日生」との記載は、被告人の身上取調書その他の記録に徴すれば「8月30日生」の誤記であることが明らかである。原判決はこの正しい生年月日に従って表示を行っており、被告人の年齢を不明確にしたまま判決をなした事実は認められない。
結論
被告人の年齢を明確にせず漫然と有罪判決を下したとの違法は認められず、上告は棄却される。
実務上の射程
公判調書の証明力(刑訴法52条)に関連し、記載の明白な誤記が記録全体から是正可能な場合の限界を示す。事案の同一性や被告人の特定に影響しない軽微な転記ミスであれば、判決の有効性に影響しないことを裏付ける。
事件番号: 昭和25(れ)1300 / 裁判年月日: 昭和25年12月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人および弁護人による事実誤認および量刑不当の主張は、いずれも適法な上告理由にはあたらない。したがって、旧刑事訴訟法の規定に基づき本件上告は棄却される。 第1 事案の概要:被告人およびその弁護人が、原判決(下級審の判断)に対して上告を申し立てた事案である。被告人側は、原判決には事実の誤認があり、…
事件番号: 昭和25(れ)1419 / 裁判年月日: 昭和26年3月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告は第二審の判決に対してなされるべきものであり、第一審判決の違法のみを主張し第二審判決の違法を主張しない上告理由は不適法である。 第1 事案の概要:被告人側が、第二審(控訴審)の判決ではなく第一審の判決に違法がある旨のみを主張して上告を提起した事案。 第2 問題の所在(論点):第一審判決の違法の…
事件番号: 昭和26(れ)319 / 裁判年月日: 昭和26年9月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】量刑不当の主張は、刑事訴訟法応急措置法13条2項(現行の刑事訴訟法405条等に相当)に照らし、適法な上告理由とはならない。 第1 事案の概要:被告人が刑事裁判の判決に対し、量刑が不当であることを理由として上告を申し立てた事案。弁護人が提出した上告趣意書の内容を検討したところ、その実質は量刑不当の主…
事件番号: 昭和26(あ)2196 / 裁判年月日: 昭和28年3月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不当な証拠採用が認められる場合であっても、当該証拠を除外した他の証拠によって犯罪事実が十分に認定できるときは、判決に影響を及ぼすべき著しい誤りがあるとはいえず、刑訴法411条の適用による破棄を要しない。 第1 事案の概要:被告人両名につき、第一審判決がBの検察事務官に対する供述調書を含む複数の証拠…