判旨
憲法37条1項が保障する裁判の迅速を欠く事態が生じた場合であっても、その事実のみをもって直ちに判決に影響を及ぼすべき違法があるとはいえず、判決の破棄理由にはならない。
問題の所在(論点)
裁判の著しい遅延がある場合に、憲法37条1項違反を理由として原判決を破棄することができるか。
規範
憲法37条1項は被告人の「迅速な裁判を受ける権利」を保障しているが、裁判の迅速が欠いた事態が生じたとしても、その一事をもって直ちに判決を破棄すべき理由となるものではない。
重要事実
被告人が起訴された事件について、原裁判所が昭和23年12月25日から昭和26年1月9日までの約2年余にわたり、一度も公判期日の指定を行うことなく、事件を放置した。弁護人は、この審理の遅延が憲法37条1項に違反するとして、原判決の破棄を求めて上告した。
あてはめ
本件において、原裁判所が2年以上の長期間にわたり何ら審理を進めず放置した事実は、事情の如何を問わず憲法が保障する迅速な裁判を受ける権利を侵害するものであり、極めて遺憾な事態といえる。しかし、過去の大法廷判決の趣旨に照らせば、裁判の迅速を欠いた場合であっても、その事実のみでは原判決の妥当性自体に影響を及ぼすものではない。したがって、審理の遅延という事実があるだけでは、上告理由として判決を破棄する根拠にはなり得ない。
結論
審理に著しい遅延があったとしても、それのみでは判決に影響を及ぼすべき違法とはならないため、本件上告を棄却する。
実務上の射程
本判決は迅速裁判の保障が訓示的規定に近い性質を持つことを示唆するが、後の高田事件判決(最大法判昭47.12.20)により、異常な遅延がある場合には免訴判決による救済が可能であると示された。現在の答案作成上は、単なる判決破棄ではなく、手続打ち切り(免訴)の可否を検討する文脈で使用すべき点に注意が必要である。
事件番号: 昭和26(あ)7 / 裁判年月日: 昭和26年6月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判の迅速が欠いたとしても、それが直ちに判決に影響を及ぼすものではないため、刑事訴訟法上の控訴理由(379条)や上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:弁護人は、本件訴訟において裁判が迅速を欠いたことを理由に、量刑不当(刑訴法405条)や原判決の破棄を求めて上告した。しかし、具体的な遅延の態様…