横領罪の成立に必要な不法領得の意思とは、他人の物の占有者が委託の任務に背いてその物につき権限がないのに所持者でなければできないような処分をする意思をいうのであつて、必ずしも占有者が自己の利益取得を意図することを必要とするものではない(昭和二三年(れ)第一四一二号同二四年三月八日第三小法廷判決集三巻二七六頁以上参照)。
横領罪における不法領得の意思
刑法252条
判旨
横領罪における不法領得の意思とは、委託の任務に背いて所有者でなければできない処分をする意思をいい、必ずしも自己の利益取得を意図することを必要としない。
問題の所在(論点)
刑法252条(および253条)の横領罪の成立要件である「不法領得の意思」の内容として、自己の利益を図る目的(利得意思)が必要か、それとも所有者として振る舞う意思(処分意思)があれば足りるか。
規範
横領罪における不法領得の意思とは、他人の物の占有者が委託の任務に背いて、その物につき権限がないのに所有者でなければできないような処分をする意思(処分意思)をいう。この際、占有者が自己の利益取得を意図すること(利得意思)までは必ずしも必要とされない。
重要事実
被告人は、A営団B出張所長として業務上保管していた営団所有の小麦250袋(100瓩入)を、何ら権限がないにもかかわらず、C株式会社の常務取締役に対し、醤油40樽および現金8000円と交換譲渡した。被告人は、共犯者と謀議の上で本件処分を行っており、これが業務上横領罪に該当するかどうかが争われた。
あてはめ
被告人は、業務上保管中の小麦を、本来の委託の任務(保管・管理等)に反し、何らの権限もないのに第三者へ譲渡するという、所有者でなければなし得ない処分を行っている。この行為は、客観的に委託の趣旨に背く処分であり、その意思は所有者として振る舞う意思といえる。自己の利益取得の意図の有無にかかわらず、このような権限外の処分を行う意思が認められる以上、不法領得の意思は肯定される。
結論
被告人には不法領得の意思が認められ、業務上横領罪が成立する。
実務上の射程
本判決は、横領罪における不法領得の意思につき、利得意思を不要とし処分意思があれば足りることを明示した重要判例である。答案上では、毀棄・隠匿罪と横領罪を区別するメルクマールとして、また、背任罪との区別の文脈で「所有者でなければできない処分」の有無を論じる際に活用すべき規範である。
事件番号: 昭和26(れ)443 / 裁判年月日: 昭和26年6月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】横領罪における不法領得の意思とは、自己または第三者の利益を図る目的で、委託の趣旨に反して権限なく物を処分する意思を指す。本件では、公金を特定の会社の赤字補填に充当する趣旨で処分する行為は不法領得の意思に基づくものと認められる。 第1 事案の概要:被告人は、農林省に所属する本件銑鉄の処分について、そ…