原判決は本件につき昭和二三年法律一六八号少年法(以下単に少年法と称する)五二条を適用した趣旨であると認められること、所論のとおりである。しかし、論旨引用に係る当裁判所の判例は、大正一一年法律四二号少年法(以下旧少年法と称する)八条を適用しても、少年法五二条を適用しても、判決に影響を及ぼさない事案につき言渡された判決である。しかるに、原判決は旧少年法一条によれば少年でないが、少年法二条、六八条一項によれば少年である被告人に対し言渡されたものである。従つて右判例は、本件に適切でない。そして、本件のような事実については、少年法五二条の適用があると解すべきもであることは、当裁判所判例の趣旨とするところである(昭和二六年(あ)第一二四一号同年八月一七日第二小法廷判決、昭和二六年(あ)第三〇六五号同年九月一一日第三小法廷判決各参照)。
旧小年法によれば少年でないが、新少年法によれば少年である被告人と新少年法第五二条の適用
新少年法2条,新少年法68条,新少年法52条,旧少年法1条,旧少年法8条
判旨
旧少年法下では少年に当たらないが、新少年法の下で少年に該当する被告人に対しては、少年法52条(不定期刑)の規定が適用される。
問題の所在(論点)
旧少年法下では少年でない者が、新少年法の施行により新たに少年の定義に含まれることとなった場合、当該被告人に対して少年法52条の不定期刑を適用することができるか。
規範
旧少年法(大正11年法律第42号)1条の少年には該当しないが、現行少年法(昭和23年法律第168号)2条及び68条1項の規定によれば「少年」に該当する被告人に対しては、同法52条の不定期刑に関する規定を適用すべきである。
重要事実
被告人は、旧少年法1条の定義によれば少年に該当しなかったが、昭和23年に制定された現行少年法2条および68条1項の規定に基づくと少年に該当する年齢であった。原判決は、この被告人に対し少年法52条の不定期刑を適用して判決を言い渡したところ、弁護人が旧少年法と新少年法の適用関係および判例違反を理由に上告した。
あてはめ
本件被告人は、旧少年法1条の基準では成人とされるが、新少年法2条および68条1項の規定に照らせば明らかに「少年」の範囲に含まれる。少年法は少年の健全育成と保護を目的とするものであり、同法の施行後に判決を言い渡す際、その時点で同法上の少年に該当する以上、その特則である52条の適用を肯定すべきである。したがって、旧少年法を前提とした過去の判例は本件のような属性の変化を伴う事案には適切ではなく、新少年法を適用した原判決に違法はない。
結論
被告人が少年法上の少年に該当する以上、少年法52条を適用した原判決は正当であり、上告を棄却する。
実務上の射程
法令の改正により「少年」の定義が拡大された場合の経過措置的な適用関係を示す。刑事訴訟において、判決時を基準として被告人が少年法上の少年に該当すれば、不定期刑の適用を認めるべきとする判断枠組みとして活用できる。
事件番号: 昭和38(あ)3221 / 裁判年月日: 昭和39年8月27日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】判決時において少年に該当する被告人に対し、少年法52条1項所定の不定期刑を科さず、成人と同様の定期刑を科した原判決には、判決に影響を及ぼすべき明白な法令の違反がある。 第1 事案の概要:被告人は昭和19年11月25日に出生した者であり、原審(昭和39年当時)の判決時において、いまだ20歳に達してお…