一 訴訟記録に丁數の記載がなく、丁數の記載が連續を缺き、又は丁數を訂正した個所に作成者の認印及び字數の記載がなくても違法ではない 二 少年法第八條の少年であるかどうかは、判決言渡の時の年齡を標準として定めるべきもので、犯罪の時の年齡を標準とすべきではない。 三 檢事が附帶控訴をした場合においては、控訴の理由が少年法の適用についてであろうと又は第一審の刑の量定に對してあろうとに拘わらず、第一審の刑より重い刑を言渡すことができる。
一 訴訟記録整理上の不備と上告理由 二 少年法第八條の少年の年齡を定める標準 三 檢事の附帶控訴と刑訴法第四〇三條
刑訴法71條,刑訴法72條,刑訴法403條,刑訴法399條,少年法8條
判旨
不定期刑を定める少年法の適用について、少年法1条の「少年」に該当するか否かは判決言渡時の年齢を標準とすべきである。また、被告人の控訴に加え検察官の附帯控訴がある場合には、不利益変更禁止の原則(旧刑訴法403条)は適用されず、第一審より重い刑を言い渡すことができる。
問題の所在(論点)
1. 少年法上の不定期刑を適用すべき「少年」の該否は、犯罪時と判決時のいずれを基準にすべきか。 2. 検察官の附帯控訴がある場合にも、被告人の控訴により不利益変更禁止の原則が適用されるか。
規範
1. 少年法における不定期刑(旧法8条1項)の適用の有無を判断する際の「少年」とは、犯罪時ではなく、判決言渡時の年齢を標準として決定される。 2. 控訴審において、被告人の控訴または被告人のための控訴がなされた場合に原判決より重い刑を科せないとする不利益変更禁止の規定は、検察官が附帯控訴(または控訴)を申し立てた場合には適用されない。
重要事実
被告人Fは、犯行当時17歳4ヶ月であり少年法上の少年に該当していたが、控訴審の判決言渡時には18歳に達していた。第一審は少年法を適用して短期3年・長期5年の不定期刑を言い渡したが、控訴審では検察官が附帯控訴を申し立て、被告人が既に少年法上の少年に該当しないことを理由に不定期刑の適用を否定し、定期刑である懲役5年を言い渡した。弁護人は、犯罪時を基準とすべきであり、また第一審より重い刑を科すことは不利益変更禁止に反すると主張して上告した。
あてはめ
1. 少年法8条(現52条)が定める不定期刑は、将来の改善更生を目的とする特殊な刑罰形態である。同法1条の「少年」の定義は、個別の条文の趣旨により解釈すべきであり、不定期刑の適用に関しては判決言渡時の年齢を標準と解するのが法文上明白である。 2. 刑訴法403条(現402条)の趣旨は、被告人の上訴権行使を保障する点にあるが、検察官も上訴権を行使している場合にはその保障は及ばない。本件では検察官の附帯控訴により、第一審判決の刑の当否が全面的に審判対象となっているため、第一審より重い刑を言い渡すことに法的な障害はない。
結論
1. 不定期刑適用の基準は判決言渡時である。2. 検察官の附帯控訴がある以上、第一審より重い刑(定期刑)を言い渡した原判決に違法はない。したがって、本件上告を棄却する。
実務上の射程
本判決は旧法下のものであるが、現行法下でも、不定期刑(少年法52条)の適用基準時が「宣告時」であるという原則を確立したものとして重要である。また、検察官上訴がある場合に不利益変更禁止の原則が適用されない点も、現行刑訴法402条の解釈としてそのまま通用する射程を有している。
事件番号: 昭和26(あ)3115 / 裁判年月日: 昭和28年1月27日 / 結論: 棄却
新刑訴法による控訴審は事後審であつて、控訴を理由ないものと認めて棄却する場合には、第一審判決時を基準として、被告人に少年法を適用すべきや否やを決すべきものと解するを相当とする。されば第一審判決当時に成人であつた被告人に対し定期刑を科した第一審判決を是認した原判決が、被告人に対して不定期刑を科さなかつたことは正当である。