被告人は適法な召喚を受けながら第三回公判期日に出頭しないで期日を懈怠したのであるから、同期日における公判手続については被告人自らこれを知るの責務があるのであり次回期日が何日に定められたかのごときは弁護人を通じても容易に知り得ることであるからである。されば、原審裁判所書記官が前記判決宣告期について被告人に対し重ねて召喚状を送達したことは、期日の告知に慎重を期したに過ぎないのであつて、本件のごとき場合にあつては必ずしも法律上その手続を必要とするものではない。
適法な召喚を受けながら公判期日を懈怠した被告人に対しては重ねて召喚手続を必要としない
旧刑訴法320条
判旨
被告人が適法な召喚を受けながら公判期日を懈怠した場合、その期日に指定された次回の判決宣告期日については、改めて召喚状を送達する等の手続を要さず、被告人不在のまま判決を宣告しても違法ではない。
問題の所在(論点)
適法な召喚を受けながら公判期日に欠席した被告人に対し、当該期日に指定された次回の判決宣告期日の告知として、改めて召喚状を送達する等の手続が必要か。また、被告人不出頭のまま判決を宣告することは許されるか。
規範
被告人が適法な召喚を受けながら公判期日に出頭せず期日を懈怠した場合、当該期日において進められた公判手続(次回期日の指定を含む)については、被告人自らこれを知る責務を負う。したがって、弁護人を通じて容易に知り得る次回期日の告知に関し、改めて召喚状を送達する等の手続は法律上必ずしも必要ではなく、弁論終結後の判決告知は被告人の出頭を待たずに行うことができる(旧刑事訴訟法368条、407条参照)。
重要事実
被告人は第1回から第3回までの各公判期日において適法な召喚を受けながら、正当な理由なく出頭しなかった。第3回公判期日には弁護人のみが出頭し、裁判長は被告人欠席のまま審理を終え、その場で次回の判決宣告期日を訴訟関係人に告知した。その後、裁判所書記官が念のため判決宣告期日の召喚状を郵送したが、その送達時期が遅れたため、被告人は判決宣告期日に出廷する機会を奪われたとして、手続の違法と憲法37条違反を主張して上告した。
あてはめ
被告人は第3回公判期日に適法な召喚を受けながら故なく欠席しており、期日懈怠の責めを負う。この場合、同期日において判決宣告期日が指定された事実は、被告人が自ら知るべき責務があり、弁護人を通じて容易に知り得たといえる。したがって、書記官による重ねての召喚状送達は「慎重を期した」ものに過ぎず、法律上の義務ではない。適法な召喚手続は既に尽くされていると評価されるため、書留郵便の遅延は出廷の機会を不当に奪ったものとはいえない。また、弁論終結後の判決宣告は被告人の出頭を要しないとする規定に則り、不出頭のまま判決を告知した手続は適法である。
結論
被告人が公判期日を自ら懈怠した以上、改めての召喚手続は不要であり、被告人不出頭のまま判決を宣告した原判決に刑事訴訟法上の違法および憲法37条違反はない。
実務上の射程
被告人の出頭義務と公判手続の進行に関する判例である。被告人が自ら権利(出頭権)を放棄して期日を懈怠した場合には、その後の期日告知の不備を理由とする手続違背の主張は制限されるという「自己責任」の論理を示す。実務上は、判決宣告期日における被告人の出頭要否、および欠席被告人に対する期日告知義務の限界を検討する際の指標となる。
事件番号: 昭和26(れ)2143 / 裁判年月日: 昭和28年1月17日 / 結論: 棄却
一 旧刑訴法事件における控訴審の第二八回公判期日(昭和二六年六月一八日)になつて、被告人よりその二日前の日附になる医師の診断書を添え公判延期願が提出されたが、その診断書によつては必らずしも出廷不可能な疾病とは認められず、また現に被告人がその公判期日に出頭していて、右公判延期申請が却下されるや自ら裁判長忌避の申立を為し、…