原審が被告人質問のため数回被告人を召喚したにもかかわらず被告人において病気のためこれに応じなかつたところから被告人質問はこれをしない旨決定して結審したからといつて原審裁判官がその良心に反して裁判をしたということはできない。
病気の被告人の防禦権制限の有無
刑訴法278条,刑訴規則183条
判旨
被告人が複数回の召喚に応じない場合、裁判所が被告人質問を実施せずに結審しても、裁判官の良心に反する裁判とはいえず、手続上の違法は認められない。
問題の所在(論点)
被告人が病気を理由に召喚に応じない場合に、被告人質問を行わずに結審することが、裁判官の良心に反する裁判(憲法76条3項違反)や正当な手続の欠如にあたるか。
規範
被告人質問は、被告人の権利保護および事案の真相解明のために行われるものであるが、被告人が正当な理由なく、あるいは病気等を理由に度重なる召喚に応じない場合には、裁判所は当該手続を経ることなく結審することができる。
重要事実
控訴審において、裁判所は被告人質問を実施するために数回にわたり被告人を召喚した。しかし、被告人は病気を理由としてこれに応じなかった。これを受けて、原審は被告人質問を行わない旨の決定をし、審理を終結(結審)させた。
あてはめ
本件では、原審は漫然と手続を打ち切ったわけではなく、数回にわたり召喚を行うなど被告人質問を実施する努力を尽くしている。被告人が病気によりこれに応じなかった以上、裁判所が質問を断念して結審したとしても、不当に被告人の防御権を侵害したものとは評価できず、裁判官がその良心に反して裁判をしたということもできない。
結論
被告人質問を行わずに結審した原判決に憲法違反や違法はなく、上告は棄却される。
実務上の射程
被告人が出頭しない状況下での公判手続の進行(特に被告人質問の省略)の限界を示す事例である。実務上は、被告人に十分な機会を与えたといえるだけの回数の召喚や手続的配慮がなされているかが、適法性の判断の分水嶺となる。
事件番号: 昭和30(あ)1627 / 裁判年月日: 昭和32年9月18日 / 結論: 棄却
刑訴第三九二条二項が控訴審に職権調査の義務を課さなかつたといつて、憲法第一三条、第七六条第三項に違反しない。