判旨
暴行罪の成立には、相手方に対して暴行または危害を加える意思(暴行の故意)が必要である。本件では、被告人にそのような意思があったとする原判決の認定を事実誤認とした上告が退けられた。
問題の所在(論点)
被告人が被害者に対し暴行または危害を加える意思(故意)を有していなかったと主張する場合において、暴行罪の成否を判断するための主観的要件の認定が問題となる。
規範
暴行罪(刑法208条)が成立するためには、客観的な暴行の事実に加え、主観的要件として、被害者に対し暴行乃至危害を加える意思(故意)を要する。この意思が認められる限り、行為者が暴行の意図を否定しても、適法に認定された事実に基づき故意の存在を肯定し得る。
重要事実
被告人が被害者Aに対して行為を及ぼした事案において、被告人側は、被害者に対し暴行乃至危害を加える意思がなかったと主張した。原判決(二審)は被告人に暴行の意思があったと認定したが、被告人側はこれを法律誤認および事実誤認であるとして上告した。
あてはめ
最高裁は、被告人に被害者Aに対し暴行乃至危害を加える意思がないことを前提とする弁護人の主張は、結局のところ原判決の事実誤認を主張するものにすぎないと判断した。原判決が認定した諸事実に照らせば、被告人には暴行の意思が認められると解され、これを否定する特段の事情は見当たらない。したがって、故意の存在を前提とした原判決の判断に法的な誤りはない。
結論
被告人に暴行の意思が認められる以上、暴行罪が成立する。上告は棄却された。
実務上の射程
暴行罪の故意の有無が争点となる事案において、内心の意図を否定する主張があっても、客観的状況から危害を加える意思が推認される場合には故意が認められることを示す。司法試験等の答案上では、暴行罪の成立要件における「故意」の認定において、具体的状況に即して『暴行乃至危害を加える意思』を検討する際の根拠として用いることができる。
事件番号: 昭和26(れ)463 / 裁判年月日: 昭和26年6月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人が原審で主張していない場合であっても、原判決が認定した事実関係に照らして正当防衛(刑法36条1項)や過剰防衛(同条2項)の成立が明らかに否定される場合には、これらの規定を適用しないことに違法はない。 第1 事案の概要:被告人は刑事裁判の原審において、正当防衛または過剰防衛の主張を行っていなか…