判旨
労働組合による団体交渉等の活動であっても、不法な団体的圧力を背景に他人の身体・意思の自由を著しく拘束して義務のないことを行わせる行為は、正当な組合活動の範囲を逸脱し、強要罪(刑法223条)を構成する。
問題の所在(論点)
労働組合の活動として行われた交渉行為が、旧労働組合法1条2項(現1条2項)の正当な活動として違法性を阻却されるか。特に、多人数による圧力を用いて義務のない書類を作成させた場合に強要罪(刑法223条)が成立するか。
規範
労働組合法上の正当な組合活動として刑法35条による違法性阻却が認められるためには、その手段・方法が社会通念上許容される範囲内にあることを要する。不法な団体的圧力を背景とし、他人の身体および意思の自由を著しく拘束して義務のないことを行わせる行為は、正当な活動の範囲を逸脱する不法な権利侵害として処罰の対象となる。
重要事実
被告人ら3名は、互いに意思を通じ、不法な団体的圧力を背景として、被害者A、B、Cらの身体および意思の自由を著しく拘束した。その上で、被害者らに対して強いて確認書等を作成・交付させ、義務のないことを行わせた。
あてはめ
被告人らの行為は、単なる交渉の域を超え、不法な団体的圧力を背景に用いている。被害者らの身体および意思の自由を「著しく拘束」した点において、手段の相当性を欠いている。また、その結果として被害者に「強いて確認書等を作成交付」させたことは、義務のないことを行わせるものといえる。したがって、かかる行為は正当な組合活動とは認められず、刑法223条の構成要件を充足し、かつ違法性も阻却されない。
結論
被告人らの所為は正当な組合活動とは認められず、強要罪が成立する。
実務上の射程
労働刑法における正当行為の限界を示す。団体交渉において多人数で囲み、物理的・心理的圧迫を加えて義務のない念書等を取る行為は、本判例の論理により強要罪や監禁罪に問われる可能性が高い。答案上は刑法35条の正当行為の限界(手段の相当性)を論じる際の準拠枠組みとして利用できる。
事件番号: 昭和54(あ)481 / 裁判年月日: 昭和56年10月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】労働組合法上の正当な団体交渉や組合活動であっても、その手段・方法において社会的に相当なものといえない場合には、憲法28条による刑事免責の保障は及ばない。 第1 事案の概要:被告人らは、労働組合の団体交渉ないし組合活動として一連の行為を行ったが、その態様が問題となり、暴力行為等処罰に関する法律違反等…
事件番号: 昭和25(あ)3252 / 裁判年月日: 昭和28年2月3日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】労働組合の団体交渉等の行為が正当化されるのは、労働組合法所定の目的を達成するためにした正当な行為に限られる。正当な限度を逸脱した暴力行為は、いかなる場合においても許されず、憲法28条による保障の対象外である。 第1 事案の概要:被告人らは、共産党の闘争方針の一環として本件行為に及んだ。第一審および…