判旨
恐喝により債務の支払猶予を承諾させた場合、当該債権の弁済期が到来していたか否かを問わず、支払義務の履行を延期させることは債務者の利益となるため、恐喝罪(二項恐喝罪)における「財産上不法の利益」を得たものと認められる。
問題の所在(論点)
債務の支払猶予を承諾させた場合において、当該債務の弁済期が既に到来していたことが二項恐喝罪の成立(財産上の利益の発生)に必要か。
規範
刑法249条2項の恐喝罪が成立するためには、脅迫等により相手方に畏怖を生じさせ、債務の支払猶予等の「財産上不法の利益」を得ることが必要である。この「利益」の有無については、行為によって債務者の支払義務の履行が先延ばしにされ、実質的に債務者が経済的便益を得たと認められるか否かによって判断すべきである。
重要事実
被告人は、債権者B及びCに対し、債務者Aの債務について支払を猶予するよう脅迫的な言動を用いて承諾させた。この際、Aが負担していたB及びCに対する各債務が、犯行当時において既に弁済期に達していたか否かは確定されていなかった。弁護人は、弁済期の到来が確定されていない以上、支払猶予による財産上の利益が発生したとはいえない旨を主張して上告した。
あてはめ
支払猶予の約束は、弁済期日の到来前であっても、あるいは到来後であってもなされ得るものである。いずれの時期になされたとしても、債務者の支払義務の履行を将来に延期させるという点において、債務者が受ける経済的利益は同一である。したがって、被告人がBらに支払猶予を承諾させた当時、対象となる債権の弁済期が到来していたか否かにかかわらず、支払義務を免れ、または先延ばしにした事実はAの財産上の利益となるものと評価できる。
結論
被告人が支払猶予を承諾させた当時、債権の弁済期が到来していたことを確定しなかったとしても、二項恐喝罪の成立を認めた原判決に違法はなく、恐喝罪が成立する。
実務上の射程
二項恐喝罪における「利益」の発生時期や性質について、弁済期未到来の債務であっても、履行の延期自体が実質的な利益に当たることを明示したものである。答案上は、二項強盗罪(236条2項)における「財産上不法の利益」の解釈においても同様の論理(実質的な経済的便益の有無)を援用することが可能である。
事件番号: 昭和43(あ)1645 / 裁判年月日: 昭和43年12月11日 / 結論: 棄却
飲食代金の請求を受けた被告人が、その請求者らを脅迫してこれを畏怖させ、よつて請求を一時断念させた場合には、刑法第二四九条第二項の恐喝罪が成立する。
事件番号: 昭和28(あ)5318 / 裁判年月日: 昭和30年10月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】2項恐喝罪の成立には、恐喝行為と不法な財産上の利益を得たこととの間に因果関係が必要であり、被害者の特定がなされていることを要する。 第1 事案の概要:被告人は、遊興施設等において恐喝行為に及び、その結果として遊興費等の支払を免れた。第一審判決では、被告人の各所為によって「同額の財産上不法の利益を受…