判旨
形式的には技術吏員及び無給嘱託員として任命されていても、実質的に高額の給与を受けて公務に従事している場合には、刑法7条の公務員に該当する。高給を支給するための便宜的な任命手続であっても、それが直ちに公務員任命を無効とする理由にはならない。
問題の所在(論点)
給与上の制限を回避する目的でなされた便宜的な任命手続(無給嘱託員等の形式)であっても、当該職員は刑法7条の公務員に該当するか。また、そのような任命は公務員としての地位を無効にするか。
規範
刑法7条にいう「公務員」とは、法令によって公務に従事する職員を指す。任命手続が、給与体系上の制限を回避するために取られた便宜的なものであっても、形式的に有効な任命がなされ、かつ実態として公務に従事している以上、同条の公務員としての適格性を否定すべきではない。
重要事実
被告人Eらは、東京都から技術吏員及び無給嘱託員としての任命を受けて公務に従事していた。しかし、この任命は、当時の規定では吏員に支給し得なかった高額の給与を支払うための便法として行われたものであり、実質的には普通吏員よりも遥かに高率の給与が支払われていた。弁護人は、このような任命は脱法行為として無効であり、被告人らは「法令によって公務に従事する職員」には当たらないと主張した。
あてはめ
東京都による任命は、形式的に有効に成立している。日々出勤を要する嘱託員を無給とする合意を禁ずる規定は存在せず、本件任命を無効とすべき根拠はない。被告人らは、単なる吏員以上の給与を実質的に得て公務に従事していたのであり、給与支給のための便法がとられたという末節的理由で公務員性を否定することはできない。
結論
被告人らは刑法7条の公務員に該当する。したがって、これに対する贈収賄罪等の適用を前提とした原判決に憲法違反や判例違反の過誤はない。
事件番号: 昭和26(れ)491 / 裁判年月日: 昭和28年4月28日 / 結論: その他
鉄道警備係が闇物資の輸送を黙認するよう請託を受け、金品を収受すれば刑法一九七条一項後段の収賄罪となる。
実務上の射程
収賄罪等の主体となる「公務員」の意義について、形式的な職位や任命の動機にとらわれず、実質的な公務従事の事実と任命の有効性から広く肯定する姿勢を示す。実務上、任命手続の瑕疵や脱法性が主張される場面での反論として有用である。
事件番号: 昭和25(れ)951 / 裁判年月日: 昭和26年5月11日 / 結論: 棄却
鉄道部内の職員が、鉄道共済組合令に基き、運輸大臣の命によつて国有鉄道共済組合の業務に従事する場合、その業務の執行は、刑法第一九七条にいう同職員の公務員としての職務に属する。
事件番号: 昭和26(れ)688 / 裁判年月日: 昭和27年12月25日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】山口県嘱託岩国渉外事務局資材係の身分を有する者に対して利益を供与した行為につき、公務員に対する贈賄罪の成立を認め、物価統制令違反については大赦による免訴を言い渡した。 第1 事案の概要:被告人は、昭和22年当時、山口県嘱託岩国渉外事務局資材係の身分を有していたAに対し、贈賄行為(第一の事実)を行っ…
事件番号: 昭和27(れ)197 / 裁判年月日: 昭和28年9月22日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】共同被告人の公判廷における供述や、被告人自身の公判調書記載の供述を総合することにより、贈賄罪の事実認定を行うことは適法である。また、併合罪の関係にある一部の罪について大赦があった場合には、当該事実について免訴を言い渡した上で、残余の罪について刑を量定すべきである。 第1 事案の概要:被告人は贈賄罪…
事件番号: 昭和25(れ)1030 / 裁判年月日: 昭和25年11月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】共犯者の一部のみが起訴され、あるいは共同被告人間で科刑に差異が生じたとしても、それは裁判所の裁量の範囲内であり、憲法14条の法の下の平等や憲法32条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人は物価統制令違反の罪に問われたが、同様に利得を得たはずの共犯者が起訴されず、被告人のみが起訴・処罰されることに…