鉄道警備係が闇物資の輸送を黙認するよう請託を受け、金品を収受すれば刑法一九七条一項後段の収賄罪となる。
鉄道警備係につき収賄罪の成立する一事例
刑法197条1項
判旨
公務員が請託を受けて収賄罪(刑法197条1項後段)に問われる際、当該行為が本来の職務そのものでなくとも、職務に「関渉し、これと密接な関係を有する」事柄であれば、職務に関するものと認められる。
問題の所在(論点)
刑法197条1項後段の受託収賄罪における「職務」の範囲、特に本来の職務権限に直接属さない行為を黙認することが「職務に関し」に該当するか。
規範
収賄罪における「職務」とは、公務員の一般的職務権限に属する事務だけでなく、これと密接な関係を有する事務をも包含する。具体的には、当該公務員の本来の職務権限に直接属さずとも、その職務に関渉し、実質的に影響を及ぼし得る程度の密接な関連性があれば、「職務に関し」という要件を充足する。
重要事実
国鉄(省線)日豊線某駅に勤務する警備掛(運輸事務官三級)であった被告人Bは、輸送中の闇物資の摘発を任務としていた。被告人Bは、闇物資の輸送を黙認してほしいという請託を受け、その対価として賄賂を受領した。弁護側は、当該黙認行為が被告人の職務権限の範囲内にあるか否かを争った。
事件番号: 昭和25(れ)951 / 裁判年月日: 昭和26年5月11日 / 結論: 棄却
鉄道部内の職員が、鉄道共済組合令に基き、運輸大臣の命によつて国有鉄道共済組合の業務に従事する場合、その業務の執行は、刑法第一九七条にいう同職員の公務員としての職務に属する。
あてはめ
被告人Bの職務は、駅における警備掛として輸送中の闇物資を摘発することであった。このような闇物資の輸送を黙認するよう請託を受けることは、本来の摘発任務と表裏一体の関係にある。したがって、闇物資の輸送を黙認する行為は、被告人の警備掛としての職務に直接関渉し、これと極めて密接な関係を有するものであると評価できる。ゆえに、被告人がこの請託に基づき賄賂を受け取った以上、職務に関連した収賄といえる。
結論
被告人Bの行為には刑法197条1項後段の受託収賄罪が成立し、有罪とした原判決は正当である。
実務上の射程
本判決は、収賄罪の「職務」概念を広義に解する「密接関連事務」の法理を認めたものである。答案上は、公務員の具体的権限を検討した上で、当該請託事項がその権限に属さない場合であっても、本来の職務を遂行する上で当然に関連する事項や、職務上の影響力を行使できる範囲であれば「職務関連性」を肯定する論拠として用いる。
事件番号: 昭和25(れ)1370 / 裁判年月日: 昭和32年3月28日 / 結論: その他
一 刑法第一九七条にいう「其職務ニ関シ」とは、当該公務員の職務執行行為ばかりでなく、これと密接な関係のある行為に関する場合をも含むものと解するのが相当である。 二 農林大臣が、復興金融金庫から融資を受けようと考えている業者(製粉株式会社の社長H)に対し、右融資斡旋の申請書に添付すべき副申書を作成すべき権限ある食糧事務所…
事件番号: 昭和26(れ)2255 / 裁判年月日: 昭和28年2月24日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】形式的には技術吏員及び無給嘱託員として任命されていても、実質的に高額の給与を受けて公務に従事している場合には、刑法7条の公務員に該当する。高給を支給するための便宜的な任命手続であっても、それが直ちに公務員任命を無効とする理由にはならない。 第1 事案の概要:被告人Eらは、東京都から技術吏員及び無給…