判旨
山口県嘱託岩国渉外事務局資材係の身分を有する者に対して利益を供与した行為につき、公務員に対する贈賄罪の成立を認め、物価統制令違反については大赦による免訴を言い渡した。
問題の所在(論点)
1. 地方自治体の嘱託職員(山口県嘱託岩国渉外事務局資材係)が、刑法上の贈賄罪の客体たる「公務員」に該当するか。2. 上告審係属中に大赦があった場合の処理はどうあるべきか。
規範
刑法198条の贈賄罪が成立するためには、賄賂を供与する相手方が「公務員」であることを要する。都道府県等の嘱託職員であっても、その職務の性質や法的地位に基づき、公的な事務に従事する者と認められる場合には、同条にいう公務員に該当すると解される。
重要事実
被告人は、昭和22年当時、山口県嘱託岩国渉外事務局資材係の身分を有していたAに対し、贈賄行為(第一の事実)を行った。また、物価統制令違反の事実(第二の事実)でも起訴されていた。原審はこれらの事実を認定し有罪としたが、被告人はAの公務員としての身分を争い上告。また、上告審係属中に物価統制令違反について大赦令(昭和27年政令第117号)が発布された。
あてはめ
1. 証拠によれば、Aは昭和22年当時、山口県嘱託岩国渉外事務局資材係の身分を有しており、その職務内容に照らして刑法上の公務員に該当すると認定した原審の判断に違法はない。2. 物価統制令違反の事実については、原判決後に大赦令が発布されたことが職権調査により判明した。これは刑事訴訟法上、免訴の事由(旧刑訴363条3号等)に該当するため、原判決を破棄し免訴を言い渡すべきである。
結論
贈賄罪については、嘱託職員であっても公務員に該当し得るとして有罪(執行猶予付懲役刑)を維持するが、物価統制令違反については大赦により免訴とする。
実務上の射程
事件番号: 昭和26(れ)2292 / 裁判年月日: 昭和27年11月4日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】公訴事実の一部について大赦があった場合、裁判所は職権で当該部分を調査し、判決で免訴を言い渡さなければならない。 第1 事案の概要:被告人は物価統制令違反(人造絹織物の不当高価買受・販売)および贈賄の罪に問われ、原審で有罪判決を受けていた。上告審継続中に昭和27年政令第117号および第87号により、…
嘱託職員等の非正規職員であっても、公務に従事している実態があれば贈賄罪等の公務員を前提とした犯罪が成立し得ることを示唆する。また、免訴事由(大赦)が上告審で発生した場合の職権破棄・自判の処理手順を具体的に示している。
事件番号: 昭和27(れ)197 / 裁判年月日: 昭和28年9月22日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】共同被告人の公判廷における供述や、被告人自身の公判調書記載の供述を総合することにより、贈賄罪の事実認定を行うことは適法である。また、併合罪の関係にある一部の罪について大赦があった場合には、当該事実について免訴を言い渡した上で、残余の罪について刑を量定すべきである。 第1 事案の概要:被告人は贈賄罪…
事件番号: 昭和28(れ)15 / 裁判年月日: 昭和28年10月20日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】判決後の大赦は免訴事由に該当し、また、犯罪後の法律の変更により刑が軽くなった場合には、刑法6条により軽い方の刑を適用すべきである。 第1 事案の概要:被告人は物価統制令違反、臨時物資需給調整法違反、および贈賄の罪に問われ、下級審で有罪判決を受けた。その後、上告審の継続中に昭和27年政令117号によ…
事件番号: 昭和27(あ)3021 / 裁判年月日: 昭和28年3月24日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】被告人の複数の犯罪事実のうち、一部の罪についてのみ大赦があった場合、大赦のあった部分については免訴とし、それ以外の罪については改めて刑を言い渡すべきである。 第1 事案の概要:被告人の複数の犯罪事実について第一審及び原判決がなされたが、上告審の継続中に昭和27年政令117号大赦令が公布された。被告…
事件番号: 昭和25(あ)1916 / 裁判年月日: 昭和27年11月11日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】公訴事実の一部について政令による大赦があった場合、当該事実については免訴の言渡しをすべきであり、大赦の対象外である他の罪数関係にある罪については、別途刑を科すべきである。 第1 事案の概要:被告人は、物価統制令3条違反の罪および刑法198条の贈賄罪に問われ、第一審および控訴審で有罪判決を受けていた…