刑訴施行法第三条の二が上告理由を制限したからといつて、所論のように憲法違反があるということはできない。
刑訴施行法第三条の二の合憲性
刑訴施行3条の2,憲法32条
判旨
業務上横領罪が成立するためには、必ずしも保管物を自己の所有とする意思や、自己の利益を得る目的で処分することを要しない。公務員が保管中の機械類を、私人に無償で払い下げて領得させた場合にも、不法領得の意思が認められ、横領罪が成立する。
問題の所在(論点)
業務上横領罪(刑法253条)の成立要件として、自己の利益を図る目的(自己の利得を目的とする不法領得の意思)が必要か。また、第三者の利益のために物件を処分した場合にも同罪が成立するか。
規範
横領罪における「不法領得の意思」とは、他人の物を占有する者が、委託の趣旨に背いて、その物につき権限がないのに所有者でなければできないような処分をする意思をいう。本罪の成立には、必ずしも保管物を自己の所有物とすることや、自己の利益を得ることを目的として処分することを要しない。
重要事実
被告人Aは、財務局の支所長として連合軍から指定された工廠内の機械器具類の管理業務に従事していた。被告人Bは、新設会社に必要な器具を入手するため、旧知のAに対し器具の払い下げを依頼した。Aは、その業務上保管する物件を、対価を受け取ることなく無償でBに払い下げ、Bに領得させた。この行為が業務上横領罪に当たるかが争われた。
あてはめ
被告人Aは、管財支所長として機械器具類を業務上保管する立場にありながら、Bの依頼に応じ、本来の委託の趣旨に反してこれらを無償で譲渡した。これは、正当な権限がないにもかかわらず、物件の所有者でなければなし得ない処分をほしいままに行ったものといえる。横領罪は自己の利得を目的とする場合に限られないため、Aに自己の利益を得る目的がなかったとしても、第三者であるBに所有者としての処分(領得)をさせる意思があれば、不法領得の意思は肯定される。
結論
被告人Aには業務上横領罪が成立する。また、Aに対し払い下げを働きかけ領得した被告人Bについても、同罪の共犯等の成立が認められる(結論として上告棄却)。
実務上の射程
本判決は、不法領得の意思において「利用処分意思」があれば足り、「利得意思(自己の利得目的)」は不要であることを明確にしたものである。答案上では、背任罪との区別において、所有者として振る舞う処分行為の有無を不法領得の意思の有無として論じる際に、本判例を根拠に「自己の利益を図る目的に限られない」旨を付記して活用する。
事件番号: 昭和26(れ)76 / 裁判年月日: 昭和26年5月31日 / 結論: 棄却
横領罪の成立に必要な不法領得の意思とは、他人の物の占有者が委託の任務に背いてその物につき権限がないのに所持者でなければできないような処分をする意思をいうのであつて、必ずしも占有者が自己の利益取得を意図することを必要とするものではない(昭和二三年(れ)第一四一二号同二四年三月八日第三小法廷判決集三巻二七六頁以上参照)。