一 原判決は、所論のように第一審判決の示した事実及び証拠を引用したものではなく、昭和二五年最高裁判所規則三〇号六条に従い、「罪となるべき事実は原判決の認定した事実のとおりであつて、右は控訴申立人にあたると解すべき被告人において不服のないところである」と判示し、事実の摘示及び証拠の説明を表示したのである。 二 なお原判決は、前記昭和二五年最高裁判所規則三〇号第六条によつて、罪となるべき事実は、第一審判決の認定した事実のとおり被告人において不服のないところであるとし、この点において原審公判廷における被告人の自白を認めているのであるから、弁護人の論旨が結局これについて同趣旨の非難をするものとしても、公判廷における自白は、憲法三八条三項にいわゆる「本人の自白」を含まないことは、当裁判所数次の判例で明らかなところであるから、この点においても原判決にはなんら所論のような違反はない。
一 第一審の事実摘示及び証拠説明につき被告人に不服がないと判示してした第二審判決と旧刑事訴訟法事件の控訴審及び上告審における審判の特例に関する規則第六条 二 昭和二五年最高裁判所規則第三〇号第六条と憲法第三八条第三項
旧刑事訴訟法事件の控訴審及び上告審における審判の特例に関する規則6条,旧刑事訴訟法事件の控訴審及び上告審における審判の特例に関する規則(昭和25年最高裁判所規則30号)6条,憲法38条3項
判旨
公判廷における被告人の自白は、憲法38条3項にいう「本人の自白」には含まれない。したがって、公判廷の自白のみに基づいて有罪判決を言い渡しても、同項の禁止する「自白のみによる処罰」には当たらない。
問題の所在(論点)
公判廷における被告人の自白は、憲法38条3項にいう「本人の自白」に含まれるか。補強証拠なしに公判廷の自白のみで有罪判決を下すことが許されるか。
規範
憲法38条3項が「本人の自白のみを証拠として、有罪とされ、又は刑罰を科せられない」と規定するのは、供述の任意性を保障し誤判を防止する趣旨である。しかし、裁判官の面前で直接行われる「公判廷における自白」は、不当な圧迫が介在する蓋然性が低く、その証明力が裁判官によって直接吟味されるため、同項にいう「自白」には含まれない。
事件番号: 昭和23(れ)1696 / 裁判年月日: 昭和24年6月29日 / 結論: 棄却
新刑訴法第三一九條第二項は「被告人は公判廷における自白であると否とを問はずその自白が自己に不利益な唯一の證據である場合には有罪とされない」と新に規定したのであるから新刑訴の適用される事件において公判廷の自白だけで有罪とした判決があればそれは新刑訴の規定に違反するものとして當然破毀さるべきである。しかし、本件は新刑訴施行…
重要事実
被告人は食糧管理法違反および物価統制令違反の罪で起訴された。原審(控訴審)は、第一審が認定した罪となるべき事実について、被告人が控訴審の公判廷において「不服がない」旨を述べたことを「公判廷における被告人の自白」として認め、補強証拠の有無を詳細に検討することなく有罪判決を維持した。これに対し弁護人は、自白のみによる処罰を禁じた憲法38条3項等に違反すると主張して上告した。
あてはめ
本件において、原判決は第一審の認定事実に不服がないとする被告人の公判廷での供述を自白として認定している。最高裁の累次の判例によれば、憲法38条3項の「本人の自白」に公判廷の自白は含まれないと解される。したがって、原審が被告人の公判廷における自白を根拠として事実を認定し、有罪を維持した判断に、憲法38条3項違反の違憲性は認められない。
結論
公判廷における被告人の自白は憲法38条3項の「自白」に含まれないため、これのみに基づき有罪としても同条には違反しない。上告棄却。
実務上の射程
本判決は憲法上の「自白」の範囲を画定したものであるが、刑事訴訟法319条2項が「公判廷における自白であると否とを問わず」補強証拠を必要と定めたことにより、実務上の結論は変更されている。答案上は、憲法と刑訴法の規律の差異を説明する際の基礎知識として活用すべきである。
事件番号: 昭和23(れ)168 / 裁判年月日: 昭和23年7月29日 / 結論: 棄却
公判廷における被告人の自白は憲法第三八條第三項にいわゆる「本人の自白」に含まれない。補足意見齋藤悠輔
事件番号: 昭和23(れ)1403 / 裁判年月日: 昭和27年12月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】判決裁判所の公判廷における被告人の自白は、憲法38条3項にいう「本人の自白」には含まれず、補強証拠がなくとも当該自白のみで犯罪事実を認定できる。 第1 事案の概要:被告人が10日間にわたり拘禁され、その間に作成された書類や公判廷における自白の証拠能力および証明力が争点となった。被告人側は、不当に長…
事件番号: 昭和25(れ)1124 / 裁判年月日: 昭和25年11月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公判廷における自白は、憲法38条3項および刑事訴訟法等に規定される「唯一の証拠が本人の自白である場合」の自白には含まれない。したがって、公判廷での自白があれば、他に補強証拠がなくても有罪判決を言い渡すことが可能である。 第1 事案の概要:被告人がAから玄米を買い受けた等の事実(物価統制令違反等)に…
事件番号: 昭和24(れ)1285 / 裁判年月日: 昭和25年10月25日 / 結論: 棄却
一 旧刑訴法第二九一条第一項に公訴提起の方法として犯罪事実の表示を必要としたのは、訴訟物体の範囲を明確にするために外ならないのであるから、公訴状に犯罪事実の表示として、記録編綴の司法警察官意見書記載の犯罪事実を引用することはもとより何等妨げないところである。 二 旧刑訴第二九一条において公判請求書に犯罪事実を表示するた…