一 旧刑訴法第二九一条第一項に公訴提起の方法として犯罪事実の表示を必要としたのは、訴訟物体の範囲を明確にするために外ならないのであるから、公訴状に犯罪事実の表示として、記録編綴の司法警察官意見書記載の犯罪事実を引用することはもとより何等妨げないところである。 二 旧刑訴第二九一条において公判請求書に犯罪事実を表示するため、記録編綴の司法警察官意見書記載の犯罪事実を引用してもかまはない。
一 起訴状における犯罪事実の表示方法として、司法警察官意見書記載の犯罪事実を引用することの可否 二 旧刑訴第二九一条において公判請求書に犯罪事実表示のため司法警察官意見書記載の犯罪事実を引用することの可否
旧刑訴法291条1項,旧刑訴法291条
判旨
判決裁判所の公判廷における被告人の自白は、憲法38条3項にいう「本人の自白」には含まれず、補強証拠がなくとも当該自白のみで有罪判決を言い渡すことができる。また、公訴提起において犯罪事実の表示として他文書(司法警察官意見書等)を引用することも、訴訟物体の範囲を明確にする目的に照らし許容される。
問題の所在(論点)
1. 判決裁判所の公判廷における被告人の自白は、憲法38条3項の補強証拠を必要とする「自白」に含まれるか。 2. 公訴状において犯罪事実を表示する際、司法警察官意見書等の他文書を引用する手法は適法か。
規範
1. 憲法38条3項(および刑訴法319条2項)が定める自白の補強証拠の要否について、判決裁判所の公判廷における被告人の自白は、同条項にいう「自白」には包含されない。したがって、公判廷での自白があれば、補強証拠を欠く場合であっても有罪の認定が可能である。 2. 公訴提起の方式として犯罪事実の表示(旧刑訴法291条1項、現刑訴法256条3項参照)が必要とされる趣旨は、訴訟物体の範囲を明確にする点にある。そのため、公訴状に犯罪事実を直接記載せず、司法警察官意見書等の他文書の記載を引用して表示することも、訴訟範囲が明確である限り妨げられない。
事件番号: 昭和26(れ)1995 / 裁判年月日: 昭和26年12月25日 / 結論: 棄却
一 原判決は、所論のように第一審判決の示した事実及び証拠を引用したものではなく、昭和二五年最高裁判所規則三〇号六条に従い、「罪となるべき事実は原判決の認定した事実のとおりであつて、右は控訴申立人にあたると解すべき被告人において不服のないところである」と判示し、事実の摘示及び証拠の説明を表示したのである。 二 なお原判決…
重要事実
被告人は、清酒や味噌の買い受けに関する事実(原判決附表記載の各事実)について起訴された。公訴提起の手続きにおいて、検察官は公判請求書に犯罪事実を直接詳述する代わりに、記録に綴じられた司法警察官の意見書に記載された犯罪事実を引用する形で公訴事実を表示した。また、被告人は公判廷において自白をしたが、これに対して補強証拠が十分に存在するか、あるいは公判廷での自白のみで有罪とできるかが争点となった。さらに、量刑における執行猶予の不付与についても不服が申し立てられた。
あてはめ
1. 自白の補強法則について、判例(昭和23年7月29日大法廷判決等)の示す通り、公判廷における自白は憲法38条3項の適用外である。本件において被告人が公判廷でなした自白は、断罪の唯一の証拠であっても、補強証拠なしに有罪の基礎とすることができるため、違憲の主張は当たらない。 2. 公訴提起の方式について、旧刑訴法291条1項が犯罪事実の表示を求めたのは訴訟範囲の明確化のためである。本件の公判請求書では司法警察官意見書の記載を引用しているが、これによって被告事件の範囲は明確に陳述されているといえる。したがって、公訴提起の手続きに違法はない。
結論
1. 公判廷における被告人の自白は補強証拠を必要とせず、それのみで有罪認定が可能である。 2. 他文書引用による公訴事実の表示は適法であり、本件の上告を棄却する。
実務上の射程
現在は刑訴法319条2項により、公判廷での自白であっても補強証拠が必要とされているため、本判決の自白に関する規範は現在の実務には直接適用されない。しかし、公訴事実の特定(刑訴法256条3項)における「訴訟物体の範囲の明確化」という趣旨や、他文書引用による特定の可否に関する判断枠組みとしては、形式的適法性を検討する際の参考となる。
事件番号: 昭和25(れ)1124 / 裁判年月日: 昭和25年11月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公判廷における自白は、憲法38条3項および刑事訴訟法等に規定される「唯一の証拠が本人の自白である場合」の自白には含まれない。したがって、公判廷での自白があれば、他に補強証拠がなくても有罪判決を言い渡すことが可能である。 第1 事案の概要:被告人がAから玄米を買い受けた等の事実(物価統制令違反等)に…
事件番号: 昭和23(れ)1403 / 裁判年月日: 昭和27年12月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】判決裁判所の公判廷における被告人の自白は、憲法38条3項にいう「本人の自白」には含まれず、補強証拠がなくとも当該自白のみで犯罪事実を認定できる。 第1 事案の概要:被告人が10日間にわたり拘禁され、その間に作成された書類や公判廷における自白の証拠能力および証明力が争点となった。被告人側は、不当に長…
事件番号: 昭和23(れ)1744 / 裁判年月日: 昭和25年10月11日 / 結論: 棄却
被告人の当該判決裁判所の公判廷における供述が憲法第三八条第三項にいわゆる本人の自白に含まれないで完全な証拠能力を有することは、しばしば当裁判所の判例に示されているとほりである。本件の場合においては、被告人の公判廷外における自白と公判廷における供述と相俟つて判示事実を認定することができるのであるから原判決には所論のように…
事件番号: 昭和23(れ)1696 / 裁判年月日: 昭和24年6月29日 / 結論: 棄却
新刑訴法第三一九條第二項は「被告人は公判廷における自白であると否とを問はずその自白が自己に不利益な唯一の證據である場合には有罪とされない」と新に規定したのであるから新刑訴の適用される事件において公判廷の自白だけで有罪とした判決があればそれは新刑訴の規定に違反するものとして當然破毀さるべきである。しかし、本件は新刑訴施行…