判旨
本判決は、期待可能性の存否が争点となった事案において、引用された大審院判例が期待可能性について判断したものではないとして、判例違反の主張を排斥したものである。
問題の所在(論点)
期待可能性の有無、および期待可能性に関する大審院判例への適合性が論点となった。具体的には、適法行為に出ることが期待できない特段の事情がある場合に責任が阻却されるか、また、その判断において過去の判例がどのような射程を有しているかが問題となった。
規範
判決文からは不明(本判決は、期待可能性の存否を判断するための具体的な規範を自ら提示したものではなく、上告理由として引用された大審院判例が期待可能性について判断したものではないことを指摘し、判例違反には当たらないとするにとどまっている)。
重要事実
被告人両名は、刑事事件において何らかの罪に問われ、有罪判決を受けたものと推認される。弁護人は、適法な行為を期待できない事情(期待可能性の欠如)があることを前提に、原審判決は大審院判例に違反し憲法にも反すると主張して上告した。しかし、判決文からは具体的な犯行態様や罪名等の事実関係は不明である。
あてはめ
最高裁は、弁護人が主張の根拠として引用した大審院判例を検討した。その結果、当該判例は所論のように期待可能性について判断したものではないと認定した。したがって、原審判決が期待可能性を否定した(あるいは肯定した)としても、それは引用判例と相反する判断を下したことにはならないと判断した。
結論
被告人側の判例違反の主張には理由がなく、本件各上告を棄却する。
実務上の射程
本判決自体が期待可能性の要件を定立したものではないが、わが国の最高裁判所が「期待可能性」という概念を実務上の争点として正面から取り扱った初期の事例として位置づけられる。答案上は、期待可能性の有無を論じる際に、本判決がその概念の存在を否定していないことを示唆する資料として参照し得る。
事件番号: 昭和26(れ)1029 / 裁判年月日: 昭和26年11月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】本判決は、原判決の認定事実に反する前提に基づく判例違反の主張、および独自の法的見解に基づく擬律の非難は上告理由として採用できないことを示した。 第1 事案の概要:被告人両名が上告を申し立てた事案。上告趣意において判例違反が主張されたが、その主張は原判決が認定していない事実を前提として、原判決の法の…