判旨
起訴前における捜査手続に違憲又は違法があったとしても、そのことのみでは、原則として後の判決自体に影響を及ぼさない。
問題の所在(論点)
起訴前における緊急逮捕の違憲性や弁護人選任権告知の欠如といった捜査段階の違法が、原判決の破棄事由となり得るか(判決に影響を及ぼすべき違法といえるか)。
規範
起訴前の捜査手続において憲法違反や法律違反の不当があったとしても、その違法が公訴提起の無効や判決の取消事由となるような例外的な場合を除き、手続上の違法のみをもって直ちに判決に影響を及ぼすものとは解されない。
重要事実
被告人が緊急逮捕された際の手続が違憲であること、および引致後に弁護人選任権の告知がなされなかったことについて、弁護人が上告理由として主張した事案である。
あてはめ
仮に被告人が主張するように、本件の緊急逮捕が違憲であり、かつ引致後の弁護人選任権の告知が欠落していたとしても、それらはすべて起訴前における手続上の瑕疵にすぎない。かかる捜査段階の違憲・違法は、本件判決の結果そのものを左右する性質のものではなく、原判決に影響を及ぼさないことが明白である。
結論
起訴前の手続に違法があっても原判決に影響を及ぼさないため、適法な上告理由には該当せず、上告を棄却する。
実務上の射程
捜査の違法が判決に及ぼす影響に関する原則的な判断を示したもの。実務上、捜査の違法を争う場合は、公訴棄却(338条4号)を求めるか、違法収集証拠排除法則により証拠能力を否定することで有罪判決の根拠を崩す方向で論じる必要がある。
事件番号: 昭和26(れ)1775 / 裁判年月日: 昭和26年12月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】逮捕等の自由の拘束が法律の手続によらず憲法に違反するものであっても、その違法が判決に影響を及ぼさないことが明らかであれば、上告理由とはならない。 第1 事案の概要:被告人は、逮捕その他の自由の拘束が法律の手続によらない不当なものであり憲法に違反すると主張して上告した。また、原審が証人証言を信じた点…