一 よしや假りに勾引状に依らずに逮捕した違法があるとしても、逮捕の違法そのものは原判決に影響を及ぼさざることは、明白であるから、これを上告の理由となすことを得ない。 二 本件で被告人は、犯罪行爲そのものを自白してはいないが、原審はその前後の行動等に關する被告人の供述、多數證人の供述記載その他の證據を綜合して判示事實を認定したものであつて、この認定は當裁判所においても首肯することができる。犯罪事實に對する被告人の自白がなければ、有罪となすことができないというような考え方は、もはや現代の文明國においては到底是認を許されないところのものである。
一 逮捕手續の違法と上告理由 二 被告人の自白がない場合の事實認定
憲法33條、,刑訴應急措置法8條,刑訴法411條,刑訴法336條
判旨
先行する逮捕手続に違憲・違法の瑕疵があったとしても、その後に適法な勾留状が発せられ、かつ、その逮捕の違法自体が判決に影響を及ぼさない場合には、当該逮捕の違法を上告理由とすることはできない。
問題の所在(論点)
先行する逮捕手続に違法・違憲の瑕疵がある場合、その後に適法な勾留手続がなされたときであっても、当該逮捕の違法を理由として判決の破棄を求めることができるか(逮捕の違法と本案判決・勾留の効力の関係)。
規範
逮捕手続に違憲または違法の瑕疵がある場合であっても、①その後に適法な勾留状が発せられていること、および②逮捕の違法自体が原判決の結果に影響を及ぼさないことが明白であること、という二つの要件を満たす場合には、当該逮捕の違法は独立した上告理由(刑事訴訟法405条等)にはならない。身分上の不当な拘束については、別の救済方法(人身保護法等)によるべきである。
重要事実
被告人は勾引状(現行の令状に相当)によらずに逮捕された。弁護人は、本件が現行犯または準現行犯に当たらないにもかかわらず無令状で逮捕された点につき、憲法33条および刑事訴訟手続に違反する違法なものであると主張し、上告した。なお、本件においては逮捕の当日中に適法な勾留状が発せられていた。また、被告人は犯罪事実を自白していなかったが、原審は証拠を総合して有罪事実を認定していた。
あてはめ
本件において、仮に弁護人が主張するように逮捕手続に無令状逮捕としての違法があるとしても、逮捕の即日に適法な勾留状が発せられている。また、原審は被告人の供述や多数の証言等の証拠を総合して事実認定を行っており、逮捕手続の適否が直接的に事実認定や量刑といった原判決の内容に影響を及ぼしたとは認められない。したがって、逮捕の違法は原判決に影響を及ぼさないことが明白といえる。
結論
逮捕手続に違法があるとしても、適法な勾留がなされ、かつ判決に影響を及ぼさない以上、上告理由にはならない。上告棄却。
実務上の射程
手続的瑕疵が判決に及ぼす影響に関する準則。捜査段階の違法が公判手続や判決の効力に当然には波及しないという「手続分断論」的思考を示す。ただし、違法収集証拠排除法則や違法な勾留による公訴棄却の議論においては、本判例の射程が限定される点に留意が必要である。
事件番号: 昭和28(あ)4790 / 裁判年月日: 昭和30年12月16日 / 結論: 棄却
刑訴第二二一条第二項第二号により現行犯人とみなされるためには、必ずしも逮捕の瞬間に同号掲記の物件を所持している必要はない。