判旨
逮捕等の自由の拘束が法律の手続によらず憲法に違反するものであっても、その違法が判決に影響を及ぼさないことが明らかであれば、上告理由とはならない。
問題の所在(論点)
先行する逮捕等の身体拘束手続に憲法違反の違法がある場合、その後の有罪判決の効力に影響を及ぼし、上告理由となるか。また、被告人不在のまま行われた公判手続は適法か。
規範
先行する手続(逮捕その他の自由の拘束)に法律上の手続によらない違法があり、それが憲法の規定に反するものであったとしても、かかる違法が直ちに判決の効力を左右するものではない。当該違法が「判決に影響を及ぼさないことが明らか」である場合には、刑訴法上の上告理由には当たらない。
重要事実
被告人は、逮捕その他の自由の拘束が法律の手続によらない不当なものであり憲法に違反すると主張して上告した。また、原審が証人証言を信じた点や、記録の取寄申請を却下した点、さらには被告人が不在のまま公判が進められた点についても訴訟手続の違法を主張した。記録によれば、被告人は適法な召喚を受けながら、正当な理由なく第3回および第4回の公判期日に出頭しなかった事実が認められた。
あてはめ
本件における逮捕等の自由の拘束に関する違法は、仮にそれが憲法に抵触するものであったとしても、原判決の結果自体に影響を及ぼす性質のものではない。判旨は、先行手続の違法が判決に影響しないことが明らかである以上、上告理由にはならないとする。また、被告人の欠席については、適法な召喚を受けながら正当な事由なく出頭しなかったものであるため、手続上の違法は認められない。証拠採否や記録取寄についても裁判所の裁量の範囲内であり、弁護権の制限には当たらない。
結論
逮捕等の手続に違法があっても判決に影響がない場合は上告理由とならない。本件上告を棄却する。
実務上の射程
手続的違法(特に先行する身体拘束の違法)が有罪判決の効力を直ちに否定するものではないとする「判決への影響」の法理を示す。違法収集証拠排除法則が確立する前の古い判例であるが、公判手続自体に瑕疵がない限り、先行手続の違法のみをもって直ちに判決を覆すことはできないという実務上の基本的な枠組みを構成する。
事件番号: 昭和26(れ)1894 / 裁判年月日: 昭和26年12月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】起訴前における捜査手続に違憲又は違法があったとしても、そのことのみでは、原則として後の判決自体に影響を及ぼさない。 第1 事案の概要:被告人が緊急逮捕された際の手続が違憲であること、および引致後に弁護人選任権の告知がなされなかったことについて、弁護人が上告理由として主張した事案である。 第2 問題…