判旨
判決が証拠として採用していない供述等と、認定された事実との間に矛盾があるとしても、判決の証拠取捨や事実認定の適法性を左右するものではない。
問題の所在(論点)
判決が証拠として採用していない供述の内容と、判決が認定した事実との間に矛盾がある場合、証拠の取捨選択または事実認定に違法があるといえるか。
規範
事実認定の基礎となる証拠の取捨選択は裁判所の自由な判断に委ねられており、判決が証拠として採用していない供述等の内容と認定事実が矛盾していたとしても、それ自体は判決に違法があることを意味しない。
重要事実
強盗の事実を認定した原判決に対し、被告人は、ある関係者の供述調書や被告人の第一審公判での供述と認定事実が矛盾していると主張した。しかし、原判決は強盗の事実を、原審公判廷における被告人の供述および被害者の犯罪届書の記載を証拠として認定しており、被告人が指摘した矛盾する供述調書等は証拠として採用していなかった。
あてはめ
原判決は、認定の根拠として原審公判廷での被告人供述と被害者の犯罪届書を明示している。被告人が指摘する矛盾した証拠(Bの訊問調書や第一審公判調書)は、原判決において証拠として採用されていないことが判決文上明らかである。したがって、採用していない証拠の内容と認定事実が異なっていたとしても、証拠によって事実を認定する過程に論理的矛盾は存しないといえる。
結論
原判決に証拠取捨または事実認定上の違法はなく、上告は棄却されるべきである。
実務上の射程
刑事訴訟における自由心証主義(318条)の帰結として、裁判所が採用しなかった証拠と認定事実の矛盾を突く主張は、単なる事実誤認の主張に過ぎず、上告理由(法律上の違法)には当たらないことを示す際に用いる。
事件番号: 昭和26(れ)1659 / 裁判年月日: 昭和26年11月6日 / 結論: 棄却
判決の証拠説明に架空の証拠を挙げていても、それが誤記であること明らかで全然存在しないものであるときは、事実認定の心証に影響を及ぼす筈なく、従つて判決にも影響を及ぼす虞は全然ないものであるから、判決破棄の理由にならない。
事件番号: 昭和26(れ)733 / 裁判年月日: 昭和26年7月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公判調書において被告人が前回の公判調書記載の犯罪事実と同趣旨の供述をした旨が記載されている場合、当該証拠に基づき事実を認定することは適法であり、証拠によらずに事実を認定した違法はない。 第1 事案の概要:被告人らの刑事事件において、原審の第9回公判調書には「裁判長は被告人等に対し、右第5回・第6回…
事件番号: 昭和26(あ)1164 / 裁判年月日: 昭和26年8月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】未決勾留日数の本刑算入は裁判所の裁量に属し、その全部又は一部を算入しないことは違法ではなく、憲法14条等の差別待遇にも当たらない。 第1 事案の概要:被告人が上告審において、原審が未決勾留日数を本刑に算入しなかったことの違法性、および裁判の迅速を欠いたこと(迅速な裁判の保障違反)を理由として原判決…