指定生産資材在庫調整規則並びに過剰物資等在庫活用規則は臨時物資需給調整法一条一項の規定により主務大臣が、必要な命令として制定された省令であつて、これらの規則そのものが刑罰を定めた罰則規定ないことは多言を要しないところである。そして、これらの省令を全面的に廃止するか一部を存置するか等は主務大臣の裁量に任かされているところであり、且つ、右活用規則の附則二項本文には「指定生産資材在庫調整規則は、これを廃止する。」と規定し、同第三項には、「この命令施行前にした行為に対する罰則の適用に関しては、指定生産資材在庫調整規則の規定は、この命令施行後も、なおその効力を有する。」と規定しているから、右附則の趣旨は、同調整規則の規定をば右活用規則施行前にした行為に対する罰則の適用に関する限りこれを存置し、その他は原則として将来に向つて廃止する旨を規定したものであつて、所論のごとく同規則廃止前にした行為に対する罰則そのものの適用を従前の例によるものとした趣旨でないことが明白である。
過剰物資等在庫活用規則附則第二項、同第三項の趣旨
過剰物資等在庫活用規則(昭和22年3月23日総理、法務庁令、外務、大蔵、文部、厚生、農林、商工、運輸、逓信、労働省令2号)附則2項,過剰物資等在庫活用規則(昭和22年3月23日総理、法務庁令、外務、大蔵、文部、厚生、農林、商工、運輸、逓信、労働省令2号)附則3項
判旨
行政省令が廃止された場合であっても、当該省令の廃止附則に「廃止前にした行為に対する罰則の適用については、なおその効力を有する」旨の経過規定があるときは、これに基づき廃止前の行為を処罰することは可能であり、委任法の処罰規定を適用する前提として違憲・違法ではない。
問題の所在(論点)
行政規制の根拠となる省令が廃止された後、廃止附則の経過規定に基づき、廃止前の違反行為を処罰することの可否(いわゆる限時法的な効力の有無)。
規範
行政規制の根拠となる省令が廃止される際、その附則において、施行前に行われた行為に対する罰則の適用につき当該省令の規定を存置させる経過規定を置くことは、主務大臣の合理的な裁量の範囲内である。また、処罰規定自体が委任法本体に定められている場合、その適用前提となる具体的命令(省令)が経過規定により効力を維持されている限り、行為当時の法令に基づき刑罰を科すことができる。
事件番号: 昭和25(れ)1046 / 裁判年月日: 昭和26年2月27日 / 結論: 棄却
所論昭和二五年三月二七日農林省令第二七号附則の趣旨は加工水産物配給規則廃止前に行われた違反行為に対しては同規則廃止後も廃止前に行われた違反行為の罰則に関する範囲においては、これを廃止しない趣旨であつて、一旦廃止して更に罰則を設けるという趣旨でない故所論違憲論は前提を欠き採用できない。
重要事実
被告人は、臨時物資需給調整法に基づく「指定生産資材在庫調整規則」に違反する行為を行ったとして同法4条に基づき起訴された。その後、同規則は「過剰物資等在庫活用規則」の制定により廃止されたが、新規則の附則3項には「この命令施行前にした行為に対する罰則の適用に関しては、指定生産資材在庫調整規則の規定は、この命令施行後も、なおその効力を有する」との経過規定が置かれていた。弁護人は、廃止された規則に基づき処罰することは違憲であると主張して上告した。
あてはめ
本件における指定生産資材在庫調整規則は、臨時物資需給調整法1条1項に基づく主務大臣の命令であり、それ自体が罰則を定めたものではない。同規則を廃止するか否か、あるいは経過措置を設けるかは主務大臣の裁量に属する。新規則附則3項は、廃止前の行為に対する罰則適用に関する限りにおいて、旧規則の規定を存置させる趣旨であることが明白である。本件の処罰根拠は法4条にあり、旧規則はその適用の前提条件となる命令として引用されているに過ぎない。加えて、法本体の附則においても法律失効後の効力存続が規定されており、旧規則の失効を理由として処罰を免れることはできない。
結論
経過規定により効力を有するとされた旧規則に違反した行為に対し、法律の罰則規定を適用して処罰することは適法である。
実務上の射程
行政刑法における限時法の効力を肯定した事案。法律の委任に基づく省令が廃止されても、附則に「罰則の適用についてはなお効力を有する」旨の経過規定があれば、行為時法に基づき処罰が可能であることを示す。答案では、法令改廃時の可罰性について、附則の解釈を通じて処罰を肯定する論拠として活用できる。
事件番号: 昭和25(あ)1669 / 裁判年月日: 昭和27年3月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】限時法の性質を有する法令が廃止された場合であっても、附則に「改正前の行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による」旨の経過規定があるときは、刑の廃止(刑訴法411条5号等)には当たらない。 第1 事案の概要:被告人が臨時物資需給調整法に基づく薪炭需給調整規則に違反する行為を行ったが、その後…
事件番号: 昭和26(れ)770 / 裁判年月日: 昭和26年9月6日 / 結論: 棄却
臨時物資需給調整法附則第二項但書は、同法失効後の規定であつて、同法はまだ失効していないのであるから、本件については同但書の適用はないのである。従つて、同但書が憲法一四条違反である旨の主張はその前提を欠き採用することはできない。
事件番号: 昭和27(あ)4912 / 裁判年月日: 昭和28年11月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】臨時物資需給調整法に基づく石油製品配給規則等が失効した場合であっても、法律の附則に「失効前の行為に対する罰則の適用については、なおその効力を有する」旨の経過規定があるときは、刑法6条(刑の廃止)には当たらず、処罰は維持される。 第1 事案の概要:被告人は、当時の「石油製品配給規則」等に違反する行為…
事件番号: 昭和27(あ)2952 / 裁判年月日: 昭和28年6月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】臨時物資需給調整法の失効前にした行為に対し、失効後も罰則の適用を認める経過規定が存在する場合、刑の廃止(刑訴法402条4号等)には当たらない。 第1 事案の概要:被告人が石油製品配給規則違反に問われた事案。同規則の根拠法である臨時物資需給調整法は、昭和27年7月1日以降廃止された。しかし、同法廃止…