判旨
食糧配給等の受配権者が受配場所を確定的に立ち去ったにもかかわらず、その事実を秘して配給を受けた場合、欺罔行為にあたり詐欺罪(刑法246条)が成立する。
問題の所在(論点)
受配権者が不在となった場合に、その不在の性質(一時的か確定的か)が詐欺罪の成否にどのように影響するか。特に、飯場を立ち去った労働者の分を世帯主である被告人が受領し続けた行為が欺罔行為にあたるか。
規範
受配権者が受配場所を一時的に不在にしているに過ぎない場合とは異なり、確定的に当該場所を立ち去った場合には、もはや受配資格を喪失したといえる。それにもかかわらず、受配資格があるかのように装って給付を受ける行為は、詐欺罪における欺罔行為に該当する。
重要事実
被告人は飯場を経営していた。当該飯場に居住していた仲仕ら7名が、各判示日時に被告人の飯場を確定的に立ち去った。被告人は、これら7名が既に立ち去った事実を秘し、ことさらに受配資格が継続しているかのように装い、配給物等を詐取した。
あてはめ
本件において、仲仕ら7名は被告人方の飯場を一時的に離れたのではなく、確定的に立ち去ったものと認められる。この場合、被告人が管理する世帯の構成員としての受配資格は実質的に消滅している。被告人がこの事実を隠して配給を受けたことは、真実に反して受配資格があるかのように装う行為であり、交付の判断の基礎となる重要事実を偽るものといえる。
結論
受配場所を確定的に立ち去った者の分を、その事実を秘して受領する行為は詐欺罪を構成する。
実務上の射程
本判例は、配給制度下での事案であるが、現代においても生活保護費や各種手当の受給資格喪失を隠して受給を継続する「不作為による詐欺」や「欺罔行為の認定」の場面で、資格喪失の決定定的事実(本件では場所的離脱の確定性)を重視する際の参考となる。
事件番号: 昭和24(れ)2244 / 裁判年月日: 昭和24年12月26日 / 結論: 棄却
一 主食の配給は食糧管理法によつて行われて居るものであり、同法が憲法第二五條に違反するものでないことは既に當裁判所大法廷の判例とする處である(昭和二三年(れ)第二〇五號事件同年九月二九日大法廷判決)従つて論旨は採用し得ない。 二 飯米通帳に一旦記入したからといつて配給物受領の委託があつたものとはいえない。原審は右委託の…