判旨
公訴事実と裁判所が認定した事実との間に、共犯の有無、犯罪の態様、物体の数量等に多少の相違があっても、客観的出来事としての同一性を失わない限り、訴因変更等の手続を経ずとも事実認定を行うことが可能である。また、複数の販売行為を包括一罪として処理することは適法であり、併合罪として処断すべきとの主張は被告人の不利益を求めるもので上告理由とならない。
問題の所在(論点)
1. 公訴事実と認定事実に共犯関係や数量等の相違がある場合、公訴事実の同一性が維持され、有効な事実認定ができるか。2. 複数の販売行為を包括一罪として処断することの適否、および併合罪の主張が上告理由となるか。
規範
公訴事実の同一性(刑事訴訟法256条3項、312条1項)が認められるか否かは、認定された事実が公訴事実に記載された客観的出来事と同一であるかにより判断される。共犯の有無、犯罪の態様、目的物の数量といった細部の相違は、基本的事実関係の同一性を直ちに否定するものではない。また、罪数関係において複数の行為を包括一罪と解することは、被告人にとって不利益でない限り、裁判所の裁量の範囲内である。
重要事実
被告人AおよびBは、特定の物体(判決文からは詳細不明)を3名に対して販売した行為について起訴された。原審は、公訴事実と比較して、共犯の有無、犯罪の態様、および物体の数量について多少の異同がある事実を認定した。さらに原審は、これら3名に対する各販売行為を、個別の罪(併合罪)ではなく、一括して「包括一罪」として処断した。これに対し弁護側が、事実認定の齟齬や罪数判断の誤りを理由に上告した事案である。
あてはめ
本件における公訴事実と原審の認定事実は、客観的出来事としての同一性を欠くものではない。単に共犯の有無や犯罪態様、数量といった細部において多少の異同が生じているに過ぎず、社会通念上、同一の構成要件の範囲内にあるといえる。したがって、公訴事実の同一性の範囲内として、適法に事実を認定し得る。また、3名に対する販売を包括一罪とした原審の措置は、実体法上の解釈として首肯し得るものである。弁護側が主張する「併合罪(数罪)として処断すべき」との見解は、被告人にとってより重い刑罰を求める性質のものであり、被告人の利益を守るべき上告審の趣旨に反する。
結論
公訴事実と認定事実に多少の異同があっても同一性が認められるため、原判決に違法はない。また、包括一罪としての処断も適法であり、上告は棄却される。
事件番号: 昭和26(れ)2434 / 裁判年月日: 昭和29年1月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法38条3項の「その被告人に不利益な唯一の証拠」に該当するか否かは、証拠全体を総合して事実認定がなされているかによって判断され、自白以外に事実を裏付ける補強証拠が存在する場合には、自白のみによる有罪判決とはならない。 第1 事案の概要:被告人Bは、第一審および控訴審において有罪判決を受けた。弁護…
実務上の射程
訴因変更の要否や公訴事実の同一性を論じる際、単なる「態様」や「数量」の差異は同一性を失わせないとする論拠として活用できる。また、被告人側に不利益な罪数変更(包括一罪から併合罪へ)を求める主張が、被告人側からの上告理由として不適法であることを示す際にも有用である。
事件番号: 昭和26(あ)28 / 裁判年月日: 昭和27年11月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】検察官が鑑定を命じた適式の書類が存在しない場合であっても、被告人側が公判において当該鑑定書の証拠調請求に対し異議を述べず、証拠とすることに同意したときは、これを証拠として採用することは適法である。 第1 事案の概要:被告人は、検察官が鑑定を命じた際の適式な書類(鑑定処分許可状等)が存在しないことを…
事件番号: 昭和23(れ)1196 / 裁判年月日: 昭和24年4月30日 / 結論: 破棄差戻
豫審判示代理判事の被告人Aに對する訊問調書は、強制處分請求書の内容を引用しているけれども同請求書は更に司法警察官の意見書が引用されて居つて具体的には犯罪事實の記載はないのであるから、右訊問調書を罪證に供するためには、右訊問調書と共に右強制處分請求書も及び前記司法警察官の意見書を證據調しなければならない。
事件番号: 昭和26(れ)835 / 裁判年月日: 昭和26年10月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告趣意において判例違反を主張する場合には、規則に基づき、具体的な判例を示さなければならない。具体的な判例の提示がない場合、不適法な上告として棄却される。 第1 事案の概要:被告人Aおよび被告人Bの弁護人が、それぞれ原判決に判例違反があるとして上告を申し立てた。しかし、上告趣意書において、違反した…
事件番号: 昭和22(れ)337 / 裁判年月日: 昭和23年11月17日 / 結論: 棄却
一 有毒飮食物等取締令という勅令は有効に實施せられており、而して同名の法律は存在していないのであるから、第二審判決が右勅令を昭和二一年勅令第五二號と表示すべきところを、昭和二一年法律第五二號と誤つて表示したのであることが明らかである。而して第二審裁判所が右勅令の第一條及び第四條を適用したのであるから、論旨のように罪刑法…