豫審判示代理判事の被告人Aに對する訊問調書は、強制處分請求書の内容を引用しているけれども同請求書は更に司法警察官の意見書が引用されて居つて具体的には犯罪事實の記載はないのであるから、右訊問調書を罪證に供するためには、右訊問調書と共に右強制處分請求書も及び前記司法警察官の意見書を證據調しなければならない。
證據調を經ない書面の内容を引用した訊問調書を罪證に供した判決の違法
舊刑訴法336條,舊刑訴法340條1項,舊刑訴法360條1項
判旨
他の書類の内容を引用する証拠書類を罪証に供する場合、引用された書類についても証拠調べを行わなければ、当該証拠書類を事実認定の資料とすることはできない。
問題の所在(論点)
証拠書類が他の書類(強制処分請求書や意見書等)の内容を引用している場合、当該引用された書類について証拠調べを行わずに、本体の証拠書類を事実認定の資料とすることができるか。
規範
証拠書類を罪証に供するためには、公判廷においてその内容を朗読または要旨を告知し、被告人に防御の機会(意見・弁解)を与えなければならない。したがって、他の書類の内容を引用している証拠書類を用いる場合には、本体の書類のみならず、引用されている書類についても適法な証拠調べを行う必要がある。
重要事実
被告人Aは、メチルアルコールの販売に関する被疑事実について、予審判事代理判事による訊問に対し「強制処分請求書記載の被疑事実に相違ない」旨を供述した。しかし、当該請求書には具体的な事実はなく「司法警察官意見書記載の通り」とされ、さらに意見書を参照しなければ具体的な犯罪事実は判明しない形式であった。原審は、当該請求書の証拠調べを行わないまま、訊問調書の記載をAおよび相被告人Bの犯罪事実認定の資料とした。
事件番号: 昭和26(あ)28 / 裁判年月日: 昭和27年11月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】検察官が鑑定を命じた適式の書類が存在しない場合であっても、被告人側が公判において当該鑑定書の証拠調請求に対し異議を述べず、証拠とすることに同意したときは、これを証拠として採用することは適法である。 第1 事案の概要:被告人は、検察官が鑑定を命じた際の適式な書類(鑑定処分許可状等)が存在しないことを…
あてはめ
本件訊問調書は、強制処分請求書の内容を引用し、さらに同請求書は司法警察官の意見書を引用している。このような重畳的な引用関係がある場合、引用先の書類(本件では請求書)の証拠調べがなされない限り、被告人は予審判事がどのような被疑事実について問を発し、自分が何に同意したのかを具体的に知ることができず、防御権の行使が妨げられる。したがって、請求書の証拠調べを経ずに訊問調書を罪証に供することは許されない。
結論
原判決には、証拠調べを経ていない証拠を罪証に供した違法がある。よって原判決を破棄し、差し戻すべきである。
実務上の射程
刑事訴訟法305条等が定める証拠調べの厳格な手続きの必要性を示す。現代の公判実務においても、取調調書が他の書面(図面や先行する陳述等)を引用・援用している場合、その引用部分が一体として内容を構成するならば、引用先書面の適法な証拠調べが必要であるとする議論の基礎となる。
事件番号: 昭和23(れ)1658 / 裁判年月日: 昭和24年3月29日 / 結論: 棄却
一 すべて裁判官は憲法及び法律にのみ拘束されることは憲法第七六條第三項の規定するところであり、從つて、下級裁判所の裁判官といえども訴訟事件の審判に當つて憲法適否の判斷をすることができることは當裁判所の判例とするところである。(昭和二二年(れ)第三四二號同二三年一二月八日大法廷判決) 二 上告申立人は法定の期間内に上告趣…
事件番号: 昭和26(れ)2434 / 裁判年月日: 昭和29年1月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法38条3項の「その被告人に不利益な唯一の証拠」に該当するか否かは、証拠全体を総合して事実認定がなされているかによって判断され、自白以外に事実を裏付ける補強証拠が存在する場合には、自白のみによる有罪判決とはならない。 第1 事案の概要:被告人Bは、第一審および控訴審において有罪判決を受けた。弁護…
事件番号: 昭和23(れ)1199 / 裁判年月日: 昭和24年4月23日 / 結論: 破棄差戻
原判決は被告人A及び同Bは、何れも「判示品物がメタノールであるとのはつきりした認識はなかつたが之を飮用に供すると身体に有害であるかも知れないと思つたにも拘らずいずれも飮用に供する目的で」之を所持し又は販賣した旨説示してゐるのである、右説示では被告人等は判示品物がメタノールであることは認識していなかつたというに歸し有毒飮…
事件番号: 昭和26(れ)835 / 裁判年月日: 昭和26年10月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告趣意において判例違反を主張する場合には、規則に基づき、具体的な判例を示さなければならない。具体的な判例の提示がない場合、不適法な上告として棄却される。 第1 事案の概要:被告人Aおよび被告人Bの弁護人が、それぞれ原判決に判例違反があるとして上告を申し立てた。しかし、上告趣意書において、違反した…