判旨
多数の同種の違反者が起訴されず被告人のみが起訴された場合であっても、直ちに憲法14条の法の下の平等に違反するものではない。また、行為時に有罪であったものが裁判時の法令により無罪とされる場合であっても、処罰を維持することは憲法39条前段に抵触しない。
問題の所在(論点)
検察官が特定の違反者のみを起訴する場合に憲法14条違反となるか、および法令の変更により裁判時に無罪となるような事情がある場合の処罰が憲法39条に違反するか。
規範
検察官による公訴提起の裁量権(起訴独占主義)の行使にあたり、同様の違反行為を行った者が多数存在する中で、特定の者のみが起訴されたとしても、それが直ちに平等原則(憲法14条)に違反して無効となるものではない。また、憲法39条前段は遡及処罰を禁止する趣旨であり、行為時に適法であった行為を後から処罰することを禁ずるものであるが、行為時に有罪であったものを裁判時の法令変更等にかかわらず処罰することは同条に抵触しない。
重要事実
被告人は、原皮需要者割当証明書を偽造したとして公文書偽造罪(刑法155条1項)および詐欺罪の罪に問われた。弁護側は、(1)行為時の法令によれば有罪であっても裁判時の法令によれば無罪となる場合に処罰するのは憲法39条に違反すること、(2)多数の同種違反者が起訴されていない中で被告人のみが起訴されたのは憲法14条の平等原則に違反すること、を主張して上告した。
あてはめ
平等原則(14条)について、判決は「多数の同種の違反者が起訴されなかった場合に被告人のみが起訴されても憲法14条に違反するものと論じえない」と判断し、検察官の起訴・不起訴の判断に広い裁量を認める立場を示した。また、遡及処罰(39条)について、行為時に犯罪とされていた行為に対し、その後の事情にかかわらず刑罰を科すことは「既に無罪とされた行為については刑事上の責任を問われない」とする憲法の規定には抵触しないとした。
結論
被告人のみが起訴されたとしても、直ちに憲法14条違反にはあたらず、また裁判時の法令状況を理由とする憲法39条違反の主張も認められないため、上告は棄却される。
事件番号: 昭和27(あ)6469 / 裁判年月日: 昭和28年5月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】犯情の類似した犯人の間で処断刑に差異が生じても、直ちに憲法14条の法の下の平等に反するものではない。また、憲法37条1項にいう公平な裁判所とは、その組織構成において偏頗の恐れのない裁判所を指す。 第1 事案の概要:上告人は、犯情の類似した他の犯人と比較して、自らに科された刑罰が重いこと(量刑の不均…
実務上の射程
検察官の公訴権濫用(差別的訴追)の主張に対する反論として、判例が極めて限定的な立場(裁量を広く認める立場)をとっていることを示す例として引用される。憲法39条に関しては、限時法の失効や法令変更時の経過措置の合憲性を議論する際の基礎的な論理を提供する。
事件番号: 昭和26(し)28 / 裁判年月日: 昭和26年5月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法14条は、人種、信条、性別、社会的身分又は門地に基づく不当な差別を禁じるものであり、不利益な待遇の理由がこれら列記事由に当たらない場合は、同条違反の問題を生じない。 第1 事案の概要:被告人が法定の期間内に控訴趣意書を提出しなかったため、控訴棄却の決定を受けた。これに対し、被告人は、期間内に提…
事件番号: 昭和55(あ)2181 / 裁判年月日: 昭和56年2月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】同一の犯罪について二重に処罰するものでない限り、量刑上の不利益が生じても憲法39条の二重処罰禁止の規定には違反しない。 第1 事案の概要:被告人が上告審において、量刑の不当性や憲法14条・39条違反を主張した事案。弁護人は、本件の処罰が二重処罰にあたると主張して上告したが、具体的な事案の詳細は本決…