判旨
原審において主張されていない心神喪失または心神耗弱の事由について、控訴審判決が判断を示さなかったとしても、それは正当な手続を定めた憲法31条に違反するものではなく、適法である。
問題の所在(論点)
原審において特に主張されなかった責任能力の欠如・減退(心神喪失・耗弱)について、控訴審判決が判断を示さなかったことが、憲法31条(適正手続の保障)違反や重大な訴訟法違反(刑訴法405条、411条等)に該当するか。
規範
控訴審において特段の主張がなされていない責任能力(心神喪失または心神耗弱)の有無について、判決が明示的な判断を示さなかったとしても、直ちに手続上の違法が生じるものではない。また、それが実体法上の権利を侵害するものでない限り、憲法31条等の基本的人権の侵害や重大な訴訟法違反を構成することはない。
重要事実
上告人は、原審(控訴審)において心神喪失または心神耗弱の事由を特段主張していなかった。しかし、原判決がこれらの事由について何ら判断を示さなかったことを捉え、これが憲法31条に違反する手続的瑕疵であると主張して上告を申し立てた。
あてはめ
本件において、心神喪失または心神耗弱の事由は原審で特に主張されたとは認められない。したがって、原判決がこれについて判断を示さなかったとしても、それは単なる訴訟法違反の主張に帰すべきものである。記録を精査しても、職権で破棄すべき重大な事由(刑訴法411条)があるとは認められず、適正手続を定めた憲法31条に抵触するような実質的違法も存在しないと判断される。
結論
本件上告は棄却される。原審で主張されなかった事項について判断を遺脱しても、憲法違反や職権破棄事由には当たらない。
実務上の射程
本判決は、当事者が主張していない事実や争点について、裁判所が判断を示さずとも違法ではないとする不告不理の原則を確認したものである。司法試験においては、控訴審・上告審における審判の範囲や、職権調査事項ではない事実に関する判断遺脱の適法性を論じる際、憲法違反を構成しない例として参照し得る。
事件番号: 昭和26(れ)1280 / 裁判年月日: 昭和26年10月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事訴訟法405条の上告理由に該当せず、かつ同法411条を適用して原判決を破棄すべき顕著な事由も認められない場合には、上告を棄却すべきである。 第1 事案の概要:被告人側から上告がなされたが、弁護人が主張した上告趣意の内容は刑事訴訟法405条に規定される上告理由(憲法違反または最高裁判所もしくは大…