本件特別抗告理由について。しかし、所論判例違反の主張は、所論にいわゆる高等裁判所の判例なるものを具体的に摘示していないから、適法な特別抗告理由の主張として採ることができない。
具体的な摘示を欠く判例違反の主張と特別抗告申立の適否
刑訴法405条,刑訴法433条,刑訴規則253条
判旨
特別抗告において判例違反を主張する場合、その根拠となる判例を具体的に摘示しなければ、適法な上訴理由の主張として認められない。
問題の所在(論点)
特別抗告において、具体的な判例の摘示を欠いたまま「判例違反」を主張することが、適法な抗告理由の主張として認められるか。
規範
特別抗告(刑事訴訟法433条1項)において、判例違反を理由として申し立てを行う場合には、憲法違反または判例違反の存在を客観的に示すため、対象となる判例を具体的に特定して摘示する必要がある。
重要事実
抗告人は、原決定が判例(いわゆる高等裁判所の判例)に違反するものであると主張して特別抗告を申し立てた。しかし、抗告人はその申立てにおいて、違反の対象となるべき具体的な判例を摘示していなかった。
あてはめ
事件番号: 昭和45(し)90 / 裁判年月日: 昭和45年11月26日 / 結論: 棄却
所論引用の名古屋高裁昭和三〇年一月一三日決定(高等裁判所刑事裁判特報二巻一・二・三合併号三頁)および福岡高等裁判所同年七月一二日決定(高等裁判所刑事判例集八巻六号七六九頁)は、いずれも併合罪の関係にある数個の起訴事実のうち一部の事実についてのみ勾留状が発せられている場合において、いわゆる権利保釈事由または保釈取消事由の…
本件における判例違反の主張は、抗告人が主張する「高等裁判所の判例」が具体的に何を指すのか、その名称や年月日、裁判所名等が全く特定されていない。このような抽象的な主張は、特別抗告の要件を充足する具体的な理由の提示を欠くものといえる。したがって、適法な特別抗告理由の主張として採ることはできない。
結論
本件特別抗告は棄却される。
実務上の射程
司法試験の答案作成においては、刑事訴訟法上の上訴・申立ての適法性を論じる際、単に「法に触れる」と主張するだけでは足りず、条文上の根拠や判例を具体的に特定する必要があるという、手続的厳格性を示す材料として活用できる。特に特別抗告という限定された不服申立手段においては、主張の特定が厳格に求められることを示唆している。
事件番号: 昭和28(し)55 / 裁判年月日: 昭和28年9月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】特別抗告の申立書に「原決定に対し全部不服である」旨のみを記載し、抗告の趣旨(具体的な不服の理由)を記載しない場合は、申立ての手続が不適法であり、棄却を免れない。 第1 事案の概要:被告人Aに対する公職選挙法違反被告事件において、弁護人が行った裁判官に対する忌避申立てが却下された。これに対する準抗告…
事件番号: 昭和28(し)31 / 裁判年月日: 昭和28年5月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事訴訟法60条2項但書の勾留更新制限規定の適用有無に関する憲法違反の主張は、実質的に単なる法令違反の主張にすぎず、特別抗告理由には当たらない。 第1 事案の概要:申立人は、禁錮以上の刑に処する判決があった後の勾留につき、刑事訴訟法60条2項但書の勾留更新の制限規定(※旧法下における更新回数制限等…
事件番号: 昭和28(す)163 / 裁判年月日: 昭和28年4月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判官の忌避の裁判が憲法32条、37条1項に違反するという主張は、独自の憲法解釈に基づかない限り、実質的には訴訟法違反を主張するものにすぎず、特別抗告の理由とはならない。裁判官の構成を含め、法に従った裁判所の判断は憲法上の裁判を受ける権利を保障しているものと解される。 第1 事案の概要:本件は、裁…
事件番号: 昭和28(し)53 / 裁判年月日: 昭和28年9月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】特別抗告の申立書に、憲法違反や判例違反といった抗告の理由(趣旨)が具体的に記載されていない場合には、刑事訴訟法434条、426条1項に基づき、当該抗告は棄却されるべきである。 第1 事案の概要:公職選挙法違反被告事件に関し、弁護人がした裁判官の忌避申立てが却下され、それに対する準抗告も棄却された。…