所論引用の名古屋高裁昭和三〇年一月一三日決定(高等裁判所刑事裁判特報二巻一・二・三合併号三頁)および福岡高等裁判所同年七月一二日決定(高等裁判所刑事判例集八巻六号七六九頁)は、いずれも併合罪の関係にある数個の起訴事実のうち一部の事実についてのみ勾留状が発せられている場合において、いわゆる権利保釈事由または保釈取消事由の存否は勾留状の発せられている事実について決すべきである旨判示したものであるところ、原決定の判示するところによれば、本件は包括一罪をなすと認められる事実のうち一部の事実について勾留状が発せられ、起訴されているというのであるから、所論引用の各判例は事案を異にし、本件に適切でない。
併合罪をなす数個の起訴事実中の一部事実につさ勾留されている場合の権利保釈に関する判例は、包括一罪中の一部事実につき勾留、起訴されている場合の権利保釈事由の存否の判断に関して、事案を同じくするか。
刑訴法89条
判旨
包括一罪の一部について勾留・起訴されている場合における権利保釈等の事由の判断は、併合罪の一部のみについて勾留状が発せられている場合に関する判例の射程外である。
問題の所在(論点)
刑訴法上の権利保釈事由(89条)や保釈取消事由(96条)を判断する際、包括一罪の一部についてのみ勾留・起訴されている場合において、併合罪の一部勾留に関する判例の法理が適用されるか。
規範
併合罪の関係にある数個の事実のうち一部のみに勾留状が発せられている場合、権利保釈事由や保釈取消事由の存否は当該勾留状に係る事実について決すべきであるが、包括一罪を構成する事実の一部についてのみ勾留・起訴されている場合には、その判断枠組みをそのまま適用することはできない。
重要事実
被告人は、包括一罪を構成すると認められる一連の事実のうち、その一部の事実についてのみ勾留状が発せられ、かつ起訴されていた。被告人側は、併合罪の一部についてのみ勾留されている場合に関する先行判例を引用し、権利保釈事由等の判断は勾留状に記載された事実のみを基準とすべきであると主張して抗告した。
事件番号: 昭和44(し)38 / 裁判年月日: 昭和44年7月14日 / 結論: 棄却
被告人が甲、乙、丙の三個の公訴事実について起訴され、そのうち甲事実のみについて勾留状が発せられている場合において、裁量保釈の許否を審査するにあたり、甲事実の事案の内容や性質、被告人の経歴、行状、性格等の事情を考察するための一資料として乙、丙各事実を考慮することはさしつかえない。
あてはめ
引用された判例は「併合罪」の関係にある事実に関するものであり、勾留事実とそれ以外の事実が別個独立の罪を構成する場合を前提としている。これに対し、本件は「包括一罪」をなす事実の一部が勾留対象となっている事案である。包括一罪は実体法上一個の罪として評価されるものであり、事実の一部が勾留・起訴されているからといって、併合罪の場合と同様に勾留事実のみを切り離して保釈事由を判断することは適切ではない。したがって、先行判例の射程は及ばない。
結論
包括一罪の一部で勾留されている場合、併合罪の一部勾留を前提とする先行判例は適切ではなく、本件抗告は棄却される。
実務上の射程
権利保釈等の判断において、勾留事実以外の事実(余罪等)をどの程度考慮できるかという問題に対し、事実間の関係が「包括一罪」か「併合罪」かによって、先行判例の射程を区別する。答案上は、勾留されていない事実の性質を検討し、それが包括一罪の一部である場合には、併合罪型の一部勾留の法理を直ちに適用できないことを示す際に用いる。
事件番号: 昭和26(し)95 / 裁判年月日: 昭和28年12月3日 / 結論: 棄却
本件特別抗告理由について。しかし、所論判例違反の主張は、所論にいわゆる高等裁判所の判例なるものを具体的に摘示していないから、適法な特別抗告理由の主張として採ることができない。
事件番号: 平成26(し)560 / 裁判年月日: 平成26年11月18日 / 結論: その他
1 受訴裁判所によってされた刑訴法90条による保釈の判断に対して,抗告審としては,受訴裁判所の判断が委ねられた裁量の範囲を逸脱していないかどうか,すなわち,不合理でないかどうかを審査すべきであり,受訴裁判所の判断を覆す場合には,その判断が不合理であることを具体的に示す必要がある。 2 公判審理の経過及び罪証隠滅のおそれ…
事件番号: 昭和25(し)66 / 裁判年月日: 昭和26年5月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法37条1項が保障する「公平な裁判所」とは、裁判所の組織構成において偏頗の恐れがないことを意味し、個別の事件で被告人に不利益な裁判がなされたことのみをもって直ちに同条項違反とはならない。 第1 事案の概要:被告人は恐喝等被告事件において保釈を許可されていたが、前橋地方裁判所太田支部は、被告人が保…
事件番号: 昭和44(し)51 / 裁判年月日: 昭和44年9月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】保釈保証金額の不当を主張することは、刑訴法433条に基づく特別抗告の理由である「憲法違反」や「判例違反」には該当しない。 第1 事案の概要:被告人が保釈を請求し、裁判所が保釈を認める決定を行ったが、その際に定められた保釈保証金の額が不当であるとして、最高裁判所に対して特別抗告を申し立てた事案である…