判旨
保釈保証金額の不当を主張することは、刑訴法433条に基づく特別抗告の理由である「憲法違反」や「判例違反」には該当しない。
問題の所在(論点)
刑訴法433条に基づき最高裁判所に特別抗告を申し立てる際、保釈保証金の額が不当であるという裁量不当の主張は、適法な抗告理由となるか。
規範
刑訴法433条の特別抗告は、同法405条所定の事由(憲法違反または判例違反)がある場合に限って認められる。単なる裁量判断の不当(保釈保証金の額の不当)を主張することは、適法な抗告理由を構成しない。
重要事実
被告人が保釈を請求し、裁判所が保釈を認める決定を行ったが、その際に定められた保釈保証金の額が不当であるとして、最高裁判所に対して特別抗告を申し立てた事案である。
あてはめ
本件抗告人は、原決定が定めた保釈保証金の額が不当であることのみを主張している。しかし、これは刑訴法405条が定める憲法違反や判例違反のいずれにも該当しない。同法433条は、抗告理由を厳格に限定しており、裁量の当不当を争うことは同条の予定するところではないと解される。
結論
本件抗告は適法な抗告理由を欠くため、棄却されるべきである。
実務上の射程
刑事訴訟法における不服申立ての構造を理解するための基本判例である。特に特別抗告(433条)が、通常の抗告とは異なり、憲法問題や判例違反に特化した非常上告的性格を持つことを示す。実務上、保証金額の変更を求める場合は、特別抗告ではなく、決定を下した裁判所に対する保釈条件の変更申立て等を検討すべきであることを示唆する。
事件番号: 平成22(し)288 / 裁判年月日: 平成22年7月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁量保釈の適否について、公訴事実とされた犯罪事実の性質等に照らし不適切な点があり得るとしても、著しく正義に反すると認められない限りは原決定を維持すべきである。 第1 事案の概要:被告人が勾留されている公訴事実について、原決定が裁量により保釈を許可したところ、検察官側が犯罪事実の性質等を理由に不服を…
事件番号: 平成24(し)534 / 裁判年月日: 平成24年10月26日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】権利保釈除外事由(刑訴法89条)が存在する場合でも、被告人が事実を認めて証拠調べが実質的に終了し、親族の監督や転居・カウンセリング受診などの環境が整っていれば、職権保釈(90条)を認めた原々審の判断は裁量の範囲内として適法である。 第1 事案の概要:12歳の女児に対する強制わいせつ被告事件。被告人…
事件番号: 昭和44(し)64 / 裁判年月日: 昭和44年10月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】保釈請求却下の裁判およびこれを維持した決定に対し、憲法13条違反等の主張があったとしても、それが裁判の結果に影響を及ぼさない場合や、実質的に単なる訴訟法違反の主張にすぎない場合は、特別抗告の理由とはならない。 第1 事案の概要:被告人側が保釈を請求したが却下され、その却下裁判を維持した原決定に対し…
事件番号: 平成14(し)218 / 裁判年月日: 平成14年8月19日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】被告人に前科がなく、安定した社会生活を営んでおり、被害者との示談が成立している等の事情がある場合、裁量保釈を否定して保釈請求を却下することは、刑訴法90条の解釈適用を誤った裁量権の逸脱として取り消されるべきである。 第1 事案の概要:被告人は相被告人と共謀し、サーフィン中にボードが接触した被害者に…
事件番号: 昭和45(し)90 / 裁判年月日: 昭和45年11月26日 / 結論: 棄却
所論引用の名古屋高裁昭和三〇年一月一三日決定(高等裁判所刑事裁判特報二巻一・二・三合併号三頁)および福岡高等裁判所同年七月一二日決定(高等裁判所刑事判例集八巻六号七六九頁)は、いずれも併合罪の関係にある数個の起訴事実のうち一部の事実についてのみ勾留状が発せられている場合において、いわゆる権利保釈事由または保釈取消事由の…